「人を診る」ということ。ドラマ「19番目のカルテ」の「あなたのお話聴かせてください」に想う事。たとえば「機能性高体温症」という病態について。そして漢方のこと。

こんにちは。

当院は、現在夏季休暇中です。ご迷惑おかけしますが
よろしくお願いいたします。→こちら

 

 

さて、現在TBSの日曜劇場は、「19番目のカルテ」という
「総合診療」にフォーカスをあてているドラマを放送してます。
この記事を書いている今日は、くしくも、放送曜日の日曜日です(笑)

我々、プライマリ・ケア医からすると
自分と関係の深い分野ですので
やっぱりどのように放送されているのか
気になるところでもあります。

ドラマですから、誇張されているように感じるところもありますが
同じ業界の「内の人」となる私が見ても
感動したり、分かるなーというところもあり
興味深く、毎週楽しみにしています。

19番目のカルテ

 

TBSのHPより→こちら

その中で、松本 潤さんが演じる徳重先生が
「あなたお話を聴かせてください。」
患者さんに語りかけるシーンがあります。

私は、そのシーンが好きです。

自分も患者さんの話を聴くことで診察をしている、、というか,、
なんなら話を聴かないと
分からない、治療できないと思うタイプの医師です。

私の診察には
このドラマのようにでてくるように
いろいろな症状の方が来院されます。

一人の方がたくさんの症状を持っているということも
たくさんあります。

医学的な検査をたくさんしても
異常がないと言われているけど
すごく辛いということもたくさんあります。

切り口となる症状は一つでも
実は問題はそこだけではないということもあります。

 

例えば
「体温」・・・・
コロナの大流行の後に
体温を測る習慣がついた人もいるかも知れません。

実は、体温が高いという時に
=「発熱」というわけではありません。

体温が高いというのは
・発熱(fever)
・高体温(hyperthermia)
という2つの病態が混在しています。

 

そもそも発熱と高体温は異なるものですが
「体温が高い」状態で
炎症反応などの採血数値が問題ないなどの
すんなり「理由が掴めないとき」
患者さんだけでなく
医師側も「もしかして、不明熱!?」なのか
と考えてしまい
「高体温かも?」という考え方が抜け落ちていることがよくあります。
こちら(國松淳和:機能性高体温の臨床. 心身医学60:227-230,2020)

 

高体温の発症のメカニズムには諸説ありますが
國松先生によれば
慢性体なストレスがじんわりと、脳の視床下部という体温調節を司る部分に負担をかけていることが基盤にあり
そこに、なんらかのイベント(このイベントは何でも良く、例えば、コロナウイルスに感染した)
が加わって、ついに体温調節障害がはっきりしだして
「体温が高い」状態となる
とのことです。

なので
結局その人の「ストレス」に向き合う必要があり
まさにその方の
「お話を聴かせていただかないと」
先に進めないのです。

きっとそこには
おそらく「ストレス」が引き起こす
高体温以外の症状もおそらくあり
たとえば、自律神経の脆弱性だとか
もしかしたら、詳しく診ると鉄欠乏などあり
そういったことも
密接に関わってくるので
丁寧な生活指導や栄養の補充や
漢方や、鍼灸(すみません、鍼灸は専門ではないですが。)
そういったアプローチが必要になり
そういうことを、外来で出来ることから向き合っているうちに
最終的には
初めに一番気にしていた
「体温の話題」など患者さん自身がどうでもよくなってしなくなる
そう言ったこともあります。

そして
こういうときに
私は漢方がとても役に立つと思ってます。

漢方のよいところは
具体的な
「病名」のレッテルははりにくい
多臓器にまたがる
慢性的な病態でも
患者さんの「証」が判断できれば
おおよその治療の方向性、このあたりの漢方から試して見よう
と歩き出すことができることです。

最近では
人の症状や病態は複雑で
むしろ「疾患」として割り切れることのほうが少ないのではないか
と思ってしまいます。

西洋学的なアプローチで「疾患」が分かると「治療がある」というのはシンプルで
私達が簡単に思いつく「医学」の在り方で
名医と言われる「医師」は
早く診断がつくこと
データをしっかり病態とつなげること
素晴らしい治療を行うこと
に長けていると思いますし
それは必ず必要なことだと思います。

でも、それでも
「検査や画像に異常がないから病気ではない」という裏返しのロジックは当てはまらず
その症状で
その人の生活やココロが阻害されていれば
なんらかのアプローチが必要なのではないかと思っております。

 

いつも書くことですが
いろいろな医師が世の中には居て
いろいろなアプローチで患者さんを良くしたいと思っております。

ぜひ、皆様が
ご自身にあう医師に巡り会えて
安心して毎日を過ごして行くことができますようにと
思っております。

あん奈