よくある疾患シリーズ 〜しもやけ〜 今日はしもやけとレイノー現象の違いなどを中心にお話します。
はじめに
寒くなると、
手や足が赤く腫れて、かゆい・痛い・紫っぽくなる
『しもやけ』で受診される方が増えてきます。
多くの方が
ご自身でも『しもやけです。』と受診されます。
この国民的『しもやけ』・・・・
実は、掘り下げると奥深いです。
今日は『しもやけ』についてお話したいと思います。
しもやけってどんな病気?
●医学用語で言うと
しもやけは、医学的には 凍瘡(とうそう) と呼ばれます。
●英語で言うと
しもやけは英語で Chilblains(または Pernio) と呼ばれ、
組織が実際に凍ってしまう Frostbite(凍傷) とは別の病気です。
●よくある特徴
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冬の寒い時期だけ出る
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複数の指や手足に、左右対称に起こることが多い
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赤く腫れる、紫色っぽくなる
-
かゆみや痛みがある
★一般的なしもやけは、1本の指だけに限局することは少ないのが特徴です。
しもやけのメカニズム
しもやけは、
炎症や免疫の病気ではありません。
寒さによって手足の血管が縮み、
その後の血流の戻りがうまくいかないことで起こります。
体の中では、次のようなことが起きています。
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寒さで血管が縮む
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暖かくなると本来は血管が広がるはずだがその切り替えがうまく行かない
-
血流が滞って、赤み・腫れ・痛みが出る
赤みや腫れ、かゆみ・痛みといった症状が出ますが
これは感染や免疫異常による炎症ではなく、
血流障害に伴って二次的に生じる反応です。
そのため採血検査しても
-
血液検査はほぼ正常
-
炎症反応(CRP)も上がらない
ということが多いのです。
→つまり、しもやけというのは、血流の「うっ滞」が中心です。
膠原病(自己免疫疾患)と関係はある?
患者さんの中には、しもやけがひどい時に
『何か病気が潜んでないでしょうか? 血流不全のような・・・ 血管が傷んでいるとか・・』
と心配して来院される方もおられます。
ここは誤解されやすいポイントなので、
はっきり分けて説明します。
一般的なしもやけそのものは、膠原病ではありません。
また、膠原病が原因でしもやけが起こる、というわけでもありません。
ただし、確かに
しもやけと見た目が似ている別の症状の中に、
膠原病と関係するものがあります。
その代表が、レイノー現象です。(次の項目に記載します。)
レイノー現象・レイノー病・レイノー症候群の違い
レイノー現象、レイノー病、レイノー症候群・・・
すごく混乱しやすい用語なので整理しておきたいと思います。
●レイノー現象とは
寒さや緊張をきっかけに指の血管が強く縮み
指の色が、白 → 紫 → 赤と変化する現象のことを言います。
指の血管が一時的に強く縮む → その後に回復する
という流れが、色の変化として見えています。
レイノー現象の本質は、血管が「必要以上に強く・急に縮む」ことです。
★正常な血管の反応では
寒いとき、体は「熱を逃がさないように」
一時的に手足の血管を細くします。
そして、暖かくなると血管は自然に広がり、血流が戻ります。
★レイノー現象で起きていること
レイノー現象では、この反応が過剰になります。
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寒さや緊張をきっかけに
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指の血管が急激に、強く縮む
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血液がほとんど流れなくなり(指が真っ白)手が冷たく感覚がなくなります。
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その後、わずかに血流はあるが、酸素の少ない血液が滞る時期を経て(チアノーゼ期 紫色)
- その後で 血管の痙攣が解除され、一気に血流が戻り(再灌流 赤色)ジンジン、ズキズキすることがあります。
つまり血管の「けいれん(攣縮)」に近い状態です。

レイノー現象の特徴は
・発作的に起こる
・数分〜数十分でおさまる
・色の変化がはっきりしている
という点です。
●このレイノー現象は、原因によって次の2つに分かれます。
-
レイノー病
→ 原因となる病気が見つからない
→ 比較的若い方に多く、良性のことが多い -
レイノー症候群
→ 背景に膠原病などの病気がある。
改めて、『しもやけ』と『レイノー現象』どうやって鑑別するのか?
繰り返しになりますが
しもやけは「血が流れにくい状態が続く」
レイノー現象は「血が止まる→戻る」
と整理した上で診察していく中で
「しもやけなのか」「レイノー現象なのか」を可能な限り見極めていく必要があります。
ポイントは
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腫れ・かゆみが主体で、複数指 → しもやけ
-
色の変化(白→紫→赤)がはっきり、単指 → レイノー現象
という違いに注目して問診することです。
その上で、レイノー現象が疑われる場合には、
膠原病が隠れていないかを確認するため、採血検査を行います。
主な検査項目
採血では、炎症反応や自己抗体をチェックします。
・炎症反応(CRP)
・抗核抗体(ANA)
・抗セントロメア抗体(CREST症候群と関連)
・抗Scl-70抗体(強皮症と関連)
等を中心に測定します。
治療はどうするの?
●一般的なしもやけの場合
治療の中心は、血流をよくすることと冷え対策です。
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手袋や靴下で冷えを防ぐ
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急に冷やしたり温めたりしない
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血流改善の内服薬や塗布薬の処方(ユベラ®など)
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体質に合わせた漢方薬の処方(冷えを改善する漢方)
「完全にゼロにする」よりも、症状を軽くし、冬を楽に過ごすことを目標にします。
●レイノー現象が疑われる場合
レイノー現象があり、
検査で膠原病の可能性が考えられる場合には、
免疫・リウマチ専門科へ紹介します。
専門科では
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肺・消化管・腎臓など
他の臓器への影響がないかを評価し、 -
その結果に応じて治療方針を決めます。
治療としては
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カルシウム拮抗薬(血管を広げる薬)
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症状や臓器障害の程度によっては
ステロイドや免疫抑制薬
などが検討されます。
→すべての方に免疫の薬が必要になるわけではありません。
「しもやけ」だと思っても、こんな時は、ご相談ください
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夏になっても症状が続く
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単指だけの症状が目立つ
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指の色が寒さで白く変わる
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指先に傷や潰瘍ができる
-
皮膚が硬くなってきた
このような場合は、「レイノー現象」かどうか考える必要があります。
おわりに
いかがだったでしょうか?
たかが「しもやけ」と思っても奥が深かったと思います。
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しもやけは、寒さによる血流のうっ滞です
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一般的なしもやけ自体は、膠原病ではありません
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ただし似た症状の中に「レイノー現象」があり
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その一部が膠原病(CREST症候群など)と関係します
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疑わしい場合は、検査と専門科連携で評価します
この記事を書きながら
私もそういえば、子供の頃、毎年しもやけで悩んだなあ〜
と思い出しました。
母が温かいお湯で
足湯をしてくれたり
クリームを塗ってくれたり・・・
母の大きな愛や優しさとどこかリンクしている
私としてはどことなく「温かい思い出」としての「しもやけ」です。
毎年のことだからと諦めず、少しでも楽に冬を過ごせるよう、一緒に考えていきましょう。
参考文献
本記事は、日常診療での経験と、皮膚科・膠原病領域の標準的な教科書・総説の内容を踏まえて整理しています。
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Bolognia JL, Schaffer JV, Cerroni L. Dermatology, 4th ed. Elsevier; 2018. Chilblains (Pernio).
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UpToDate. Chilblains (pernio): Clinical manifestations and diagnosis.
-
UpToDate. Raynaud phenomenon: Pathogenesis, clinical features, and diagnosis.
-
Herrick AL. Pathogenesis of Raynaud’s phenomenon. Rheumatology (Oxford). 2005;44(5):587–596.
-
Wigley FM, Flavahan NA. Raynaud’s Phenomenon. N Engl J Med. 2016;375:556–565.
-
Mayo Clinic. Chilblains – Symptoms and causes.


