家庭医の目線。家族の木という考え方

こんにちは。やまもとよりそいクリニックのあん奈です。
今日は、「家族の木」という考え方について話して見たいと思います。

 

・まず「家庭医は、何を診ているのか?」についてです。

前回、BPSモデルについてお話ししました。

詳しくは、こちら。→ BPSモデルについて

 

お互いに作用し合う多数の要素で構成され、全体として秩序をなしているものを「システム」と呼ぶそうです。

このシステム理論を

医学の臨床に当てはめたのが

BPSモデルでした。

生物社会心理モデル(BPSモデル)の図

患者さんの体内で起こっている病的な変化を

対人関係、家族やそのほかの社会も含めて

大きなシステムとして捉えて

そのシステムに対してアプローチをしていこう!

参考文献:Engel GL:The Clinical Application of the  Biopsychosocial model.Am J Psychiatry,137:535-544,1980  

そういう考え方です。

 

なので家庭医が何を診ているのか?

よく使われる説明として

家庭医はいろんな倍率のメガネを携えている。

というものがあります。

医師として、「疾患」を診たい時は、個人や臓器、はたまた細胞がよく見えるようなメガネを装着する。

はたまた、「疾患を含め、その人全体を見る」(全人的にという言い方をしますが)

という時は、メガネの倍率を替えて

家族や地域など、、、そういうマクロの方向が見えるメガネを装着する。

 

家庭医は何を診ている?イメージ図

 

・それでは「家族の木」ってどういうものでしょうか?

有名な家族の木という絵があります。

これは私が家庭医療って面白いなと思った有名な図です。

 

外来を受診する患者は通常一人ですが、

その患者の背後に木があり、

家族がいるとイメージしながら診療を行うことを模式図として表しています。

 

 

家族の木のイラスト

参考文献:松下明監訳.家族志向のプライマリ・ケア.シュプリンガー;2006.

(出典:The Family in Medical Practice A Family Systems Primer Editors: Crouch, Michael A., Roberts, Leonard (Eds.) )

 

 

 

例えば、

喘息の患者さんを診るとします。

目の前にいるのは、幼少期からクリニックに通院している喘息の17歳女性。

今までコントロールが良かったのに。

ステロイドを含む、アレルギーや炎症を抑えるお薬の内服、吸入など

試みますがあまり改善しません。

ふと、その女性との会話の中で

「最近、、、、両親の喧嘩が絶えなくて、、本当に嫌でストレス」と聞き出せました。

聞けば、両親の喧嘩の種は、

父方の少し認知症が出始めた祖父の介護問題。

母親がいつも介護の愚痴をこぼしているのが見ていて辛いのだと、、、、

となると、、、

もしかしたら彼女の喘息を止めるのは、、

お薬なんかではなく

祖父のデイサービスという方法かもしれない。

医師がアプローチするのは

祖父のケアマネさんかもしれません。

 

このように、本人の症状の解決策は本人の中だけにあるのではないかもしれません。

 

こういった事は

今までの医学教育の中では習ってこなかった部分です。

 

「喘息とは?」「喘息の治療薬とは?」「ガイドラインは?」

という事は医師は得意です。

 

でも教科書に

「喘息の時は、その祖父のデイサービスをケアマネさんに相談せよ!」

とは書いてません(笑)

個人だけを診ていても解決しない。

システム全体へのアプローチが必要となってくるわけです。

 

私は医学教育に興味があり

今までも医学生さんや研修医の先生の教育に携わってきておりました。

今でも外勤先の西淀病院で研修医の先生の指導もさせていただいております。

 

医学生さん、医師になりたての

どの科に興味行くか決めていない方を指導していると

なかには

「なんか 先生の外来って雑談ばっかりですね」と不服そうな方も中にはおられます。(笑)

 

それは、それでまあ当たり前というか

さあ、今から「医学の勉強するぞ!!」と勢い込んできた彼らには

少し物足りなく感じることも分からなくもありません。

私も「医学的なこと」に興味が向いていた時がありました。

 

でもそれだけでは解決しないことをたくさん診てきて

こうやってその方全体を知ろうとするのは、

結局、治療への近道と気づき始めました。

 

こうやって

色々な会話の中に

その方の

死生観だったり

人生で大切にしてきたものだったり

そういうことが分かってきて

その人ようの」の医療が形作られていくのだと思います。

 

 

なので

この医者、プライベートな事ぐいぐい聞いてきて変なの!?

と思わずに

できたら 「あなた」について色々教えてくださると嬉しいです。

どうぞ心を楽にして色々お話を聴かせてください。

一見、医学的には関係ないことも・・・・

もちろん言いたくない事は黙っておいて大丈夫です。

 

ただ、家庭医の先生達は

「先生のご専門は?」と聞かれると

「あなたです!(I am specialized in you!)」

答えるぐらい、あなたに興味津々です!!!

それでは今日はここまで。

あん奈