お子さんの5日以上続く発熱は、再診をよろしくお願いします。 川崎病やその他の疾患の可能性も含めてもう一度、診せていただきたいです。

こんにちは。
寒くなってまいりましたね。

急な気温低下で
体調を崩されてないですか?

当院の発熱外来も連日混み合ってまいりました。
インフルエンザの患者様が増えてきております。

さて、当院は
小児科専門医ではないですが
お子さんの診察も、できる範囲で近隣の小児科の先生にご協力いただきながら
診せていただいています。

発熱で受診されたお子様の
付き添いできていただいた保護者の方にいつも説明させていただくことがあります。
今日はそのことをブログでも共有させていただき、「川崎病」という病気を取り上げます。

まずは、ウイルスとは?細菌とは?というお話
いつも、お配りする資料を共有します。

さて、当院の発熱外来に来ていただいた
お子様の保護者の方にいつもお配りする資料です。

まずは、よろしければこちらを御覧くださいませ。

ウイルスと細菌

このように
どのウイルスもだいたい5日程度で
発熱が治っていくのが一般的です。

ウイルスの場合は
御本人の免疫力で
ウイルスを押し出していくのをたすけるようなお薬(対症療法)を
飲みながらその期間が過ぎ去るのを
待つといった形です。

症状が楽なら、無理してお薬は飲まなくてもよいです。
そして抗生剤(抗生物質)は、ウイルスには効果がありません。

抗生剤(抗生物質)については
過去のブログでもお話してますので
こちらを御覧ください。

●一刻も早く風邪を治したいので抗生物質(抗生剤)を処方してください!?こちら

では、5日以上熱が続くときは?

ここが今日の、とても大切なポイントです。

発熱が5日以上続くときは、自然なウイルス感染の経過とは違う可能性があります。

そのため、当院では必ず
「5日以上発熱が持続する場合は、再診をお願いします」
とお伝えしています。

理由は2つあります。

  1. 細菌感染に切り替わっていないか(抗生剤が必要になるケース)

  2. そもそも感染症ではない病気が隠れていないか

その中で、医療者として決して見落としてはいけない病気があります。

川崎病とは?

今日は、このように長引く発熱のお子様を診たら
必ず否定しておきたい疾患である「川崎病」について取り上げます。

 

●川崎病とはどういう病気でしょうか?

 

川崎病は、1967年に日本の小児科の医師、川崎富作先生という方が最初に報告されました。
4歳以下のお子さんに多く全身の血管に炎症が起こる病気です。


全身の血管の中でも、特に「心臓の血管(冠動脈)」が影響を受けることがあるため
早期の診断と治療がとても大切です。

 

●原因はなんでしょうか?

実は、現時点でも原因は まだはっきりとは分かっていません

ウイルスや細菌に感染したことがきっかけで
身を守ろうとして始まった免疫反応が、過剰に活性化
「サイトカイン」という炎症物質が大量に産生されることで
全身の血管に炎症が引き起こされ様々な症状が出現するのではないかと考えられています。

●どのような症状があるでしょうか?

川崎病6兆候

川崎病の代表的な症状を6つご紹介します。
6つの症状のうち5つ以上を認める場合に、川崎病と診断されます。
4つしか症状がなくても、心臓の血管(冠動脈)に瘤があれば川崎病と診断されます。
また、症状が5つ以上認めていなくても、川崎病と考えて治療を開始することがあります(不全型川崎病)

川崎病診断手引きは→こちら日本川崎病学会 HPより

症状 具体例
発熱 5日以上続く高い熱
目の充血 目やにが少なく、白目が赤い
唇・口の変化 唇が赤い、舌がイチゴのように赤い
発疹 体に赤いブツブツ
手足の変化 手や足が赤く腫れる
首のリンパ節が腫れる 特に片側の首に大きな腫れ

この他には
有名なもので言いますと
BCG予防接種部位が赤くなる
というものがあります。

それ以外の症状で言うと
・いわゆる風邪の諸症状(鼻水 咳 痰)
・嘔吐、下痢などのお腹の症状
・関節痛

などですが、これらは、他の感染症との区別がつきにくい症状ですよね。。。

なのでやはり、「5日以上発熱が持続する場合」
特徴的な、目の充血や唇の充血がないか?
意識をもって探しに行く必要があります。

●注意しておきたいのには理由があります。

さて、川崎病は決してめずらしいものではありません。
なぜ、特別に分けて考える必要があるのでしょうか?

その理由は「心臓の血管(冠動脈)に後遺症を残すことがある」からです。

そのために
できるだけ早めに、診断をつけて治療を開始することが大切です。

●診断はどのようにつきますか?

下記のように、「川崎病」を疑ったら、「心臓エコー」が必要で、基本的には「入院治療」になります。

そのため、上記症状を中心に身体診察で確認し
疑ったら、すぐに「入院にできる小児科専門医がいる病院に紹介」となります。

送らせて頂いた先の
小児科の先生方は
診察と、血液/尿検査・心エコー(心臓の超音波)などで確認してくださいます。

川崎病ととても良く似た疾患がいくつかありますので
他の病気ではないか?というような目線で診察を続けていきます。

採血では
「これがあれば川崎病!」といった指標はありませんが
全身の血管の炎症を反映して炎症反応が上昇します。
心臓のエコーでは、心臓の血管(冠動脈)に瘤ができていないか確認します。

● 治療はどうなるのですか?

治療は専門の病院で、入院にて治療行うことが一般的です。

強い炎症反応をできるだけ早く抑えることで
心臓の合併症を大幅に減らすことができます。

一般的には、
・「アスピリン療法」と「免疫グロブリン療法」の併用を行います。

血液を固まりにくくしつつ、行き過ぎた免疫の力を抑える療法です。
効果を見ながら、その他の炎症を抑える治療(ステロイドなど)を組み合わせて治療していきます。

おわりに

さて、今日は、お子さんの発熱についてお話しました。
お子さんの熱が、数日持続するとご不安になりますよね。。。

簡単にまとめると

  • お子さんの風邪は、多くがウイルスによるもの

  • 発熱は通常5日以内におさまることが多い

  • 5日以上熱が続くときは、必ず再診してください

  • とくに、川崎病は医療者が見逃してはいけない病気

というお話でした。

お子様を診せていただくとき
保護者の方が、「安心して」
お家で療養のサポートをしていただくことがとても大事です。

是非、気になることがあれば
「心配しすぎかな…」と思わずご相談ください。


ご家族の“違和感”はとても大切です。
一番そばで見てらっしゃる家族様が「うまく言えないけど、いつもと違う」
という事は、実は医療者にとって大切な所見(ヒント)の一個です。

むしろどんどん教えていただきたいです。

それでは、感染症の季節・・・
どなたさまも、お元気に過ごされますように。

あん奈

 

参考ブログ

・一刻も早く風邪を治したいので抗生物質(抗生剤)を処方してください!?→こちら

一刻も早く風邪を治したいので抗生物質(抗生剤)を処方してください!?