インフルエンザワクチン接種後に、抗原検査陽性!? これって感染???予防接種のせい???

こんにちは。
流行ってますね。。
インフルエンザが。。。

当院の発熱外来も、インフルエンザ陽性率が高まってきました。
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さて、先日
「インフルエンザワクチン接種した当日の夜に発熱した!」という人が
受診されました。

症状からもインフルエンザが疑われ
周囲も流行っている状況から
検査したところ「インフルエンザ抗原検査陽性」でした。

患者さんにお伝えしたところ
「これって昨日の接種したインフルエンザワクチンの影響で陽性となっているんじゃないんでしょうか?」
というように聞かれました。

さて、みなさんは、どう思いますか?

さて、今日はそんなお話です。

ヒントは・・・・

「インフルエンザワクチンのうち、何を接種したのか答えが変わる」です。

さて紐解いて行きましょう。

(回答だけお知りになりたい方は、「さて、答えです。」まで飛んでくださいませ。)

少し前置きと、おさらいです。

●インフルエンザウイルスは、たくさんのタンパク質でできています。

 

ウイルスを見る

さてインフルエンザウイルスを詳しくみると、

インフルエンザウイルス

こんなに多くの蛋白質でできています。
すべてのタンパク質がそれぞれの働きがあるのですが
ここでは、シンプルに以下の3つだけ取り上げます。

①ウイルスの表面にある
・HA(ヘマグルチニン)タンパク質
・NA(ノイラミニダーゼ)タンパク質

インフルエンザウイルスが細胞に感染するためには
ウイルス表面の HA タンパク質が
人の細胞表面に結合する必要があります

②ウイルスの中にある内部タンパク質

・NP(ヌクレオプロテイン)タンパク質
 インフルエンザウイルスの遺伝子を包んでいるタンパク質

です。

●ところで季節性インフルエンザとは?

インフルエンザウイルスには実は、A、B、C、Dの4種類あります。
その中で流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。

 

A型インフルエンザウイルスには
上記のHAタンパクが18種類、NAタンパクは、11種類も存在します。
そのためこのHAとNAの様々な組み合わせができるので
A型インフルエンザウイルスにはたくさんの「亜型」が存在します。

一方、B型インフルエンザウイルス
遺伝子的に安定しておりあまり大きく変異をしません。
そのため亜型という呼び方をせず、〇〇系統というふうに呼ばれます。

さて
現在、人で季節的に流行しているのは
A(H1N1)pdm09,
A(H3N2)
B(ビクトリア系統)

※ B/山形系統は2020年以降、自然界での検出報告が極めて少ない状況だそうです。

の3タイプです。

●ところでインフルエンザワクチンとは?

さて、インフルエンザワクチンは現時点で
日本国内では以下の2つが使用可能です。

①不活化ワクチンの「インフルエンザHAワクチン」

さて、みなさんが思う従来の注射のワクチンはこちらです。

インフルエンザウイルスが細胞に感染するためには
ウイルス表面の HA が、人の細胞表面のシアル酸受容体というところに結合する必要があります。
HAを中和抗体でブロックできれば、そもそも感染が成立しません。

現在の季節性インフルエンザワクチンは
その時流行しているウイルス
現在で言うと
A(H1N1)pdm09・A(H3N2)・B(ビクトリア系統) の
3株のHA(ヘマグルチニン)だけを精製して配合しています。

 

HAに対する抗体は、ウイルスが細胞に侵入することを直接防ぐ「中和抗体」であり、
これがインフルエンザに対する主な防御になります。

 

②経鼻弱毒生ワクチンの「フルミスト®点鼻液」

新しくできた、点鼻のタイプのワクチンです。

弱毒化された生きたウイルスを使用する生ワクチンです。
つまり、ウイルス全体が体に一度入ります。

それによって
一度体に「インフルエンザがかかった状態を」予防訓練してもらっているのです。

「点鼻」、つまり直接鼻粘膜へと接種します。(ちなみに検査で綿棒をいれるのもお鼻です。)

 

●抗原キットは、インフルエンザウイルスのどのタンパク質が関係するか?

 

さて前回

・よくある疾患シリーズ〜インフルエンザ〜 2024.12月初回 2025.9月更新→こちら

で抗原キットの仕組みに触れました。
ここで簡単におさらいすると

 

陽性インフルエンザキット

キットの左の穴に
検体を垂らすと「標識抗体」と一緒に左の穴から右に向かって流れていきます。
標識抗体が、TやCのラインまで来ると色が出る仕組みとなっています。

・「C」の部分には「標識抗体」と直接反応できる「抗体」がついています。
ウイルスがいようがいまいが、ちゃんと標識抗体がそこまで運ばれたことを意味します。
そのため「コントロール」と言われますが
ちゃんと検体がとれたという事がわかるためのものです

・そして「T」の部分には
インフルエンザウイルスのNPタンパク質と反応する「抗体」
がついています。
つまりウイルスがいれば
ウイルスにNPタンパク質があるので
Tラインにもウイルスを介して標識抗体がトラップされ色がつきます。

 

つまり迅速抗原検査、はインフルエンザの「ヌクレオプロテイン(NP)抗原」を検出
しているのです。

さあ、冒頭の質問に対する答えが、少し見えてきたでしょうか?

さて、答えです。

さて、長々とお話してきましたがそろそろ答え合わせです。

冒頭でお話したように

インフルエンザワクチンを摂取した後、抗原キットが陽性!という場合は
どちらのワクチンを接種したか確認する必要があります。

 

①不活化ワクチンの「インフルエンザHAワクチン」を接種した場合

ワクチンの主成分は
A型・B型それぞれのウイルスの表面にある「ヘマグルチニン(HA)抗原」です。

しかも接種経路は、注射です。
直接鼻咽腔に入れるわけではありません。

このタイプのワクチンを接種した場合
体内ではHAに対する抗体が作られます。

そして、インフルエンザ抗原検査はNPタンパク質を検出するのでした。

NPタンパク質は、このワクチン接種後には作られませんので
不活化ワクチンを注射した後に
抗原検査をしても陽性になりません。

抗原検査陽性なら、「インフルエンザ」の感染の可能性が高いです。

 

②経鼻弱毒生ワクチンの「フルミスト®点鼻液」した場合

一方、フルミスト(経鼻インフルエンザワクチン)接種後に
インフルエンザ抗原検査を受けると
数日〜1~2週間程度、抗原検査で陽性となることがあります。
特に小児では検出がやや長引くことがあるようです。(まれに3週間程度)

これは、ワクチンに含まれる弱毒化されたインフルエンザウイルスそのものを
鼻に入れているので
もちろんNPタンパク質もそこにあるわけです。

 

→この場合、ほとんどの場合、本当のインフルエンザ感染ではありません。
フルミストの弱毒ウイルスが鼻やのどで一時的に存在しているだけで、自然に消えていきます。

 

おわりに

さていかがだったでしょうか?

冒頭の方は、注射の従来型のインフルエンザHAワクチン接種でしたので
「インフルエンザ」と診断しました。
インフルエンザワクチンを摂取してから間もない時期に
潜伏期を経て発症するってことは
当院でも
毎年数名おられます。

いやあ。
本当に、予防接種は奥深く
難しいですよね。。

「機序」を理解すると
分かるのだと思いますが
なかなかワクチンも多くて混乱しちゃいますね。。

もし、このようなワクチンに関する疑問がありましたら
是非、クリニックに相談してくださいね。

あん奈

 

 

過去の参考ブログ

 

・よくある疾患シリーズ〜インフルエンザ〜 2024.12月初回 2025.9月更新→こちら

よくある疾患シリーズ〜インフルエンザ〜 2024.12月初回 2025.9月更新

 

・ご注意を!!インフルエンザの大流行です。発熱外来は、完全予約制です。必ずお電話をください。→こちら

ご注意を!!インフルエンザの大流行です。発熱外来は、完全予約制です。必ずお電話をください。