アレルギーのお話をしてみます。

花粉症の季節です。
目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、咳・・・・つらいですよね。
さて、花粉症も「アレルギー」の一種といえます。

アレルギー症状

さて『アレルギー』は
聞き慣れた言葉であるのに
説明しようとするとなかなか難しい言葉です。

私もアレルギー専門医ではないので
なかなか理解が難しいところもありますが
私なりにアレルギーについて
分かっていることについて少しまとめてみたいと思います。

 

寛容(かんよう)と免疫(めんえき)とは?

さて、まずは言葉の整理です。

やや難しい言葉ですが寛容と免疫というところから。

『寛容』とは・・・・

我々は、毎日食事をしております。

食べ物は異物といえば異物ですが
一般的には、食べても体に取り込まれて栄養となります。

これはつまり、体がたべものを受け入れたということです。
これを『寛容』といいます。

『免疫』とは・・・・

一方免疫とは何でしょう。
体にとって害のある細菌やウイルスが来たとき
体は必死に戦って
排除する働きがあります。

これを『免疫』と言います。

これも大事な体に備わっている機能です。

では、『アレルギー』とは?

では、『アレルギー』とはなんでしょうか?

本来は『寛容』されてほしいものに対して
(例えば、卵とか花粉とか)
『免疫』が過剰に働き追い出そうとすること

これを『アレルギー』と言います。

つまり、『過剰に働く免疫』のことを『アレルギー』と呼びます。
これが、アレルギーを考える時の基本的な考え方です。

 

IgE抗体』『肥満細胞』『感作』とは?
まずは、Ⅰ型アレルギー反応を理解しましょう。

さて、アレルギー、『過剰な免疫』の作用は、実はいろいろなタイプ(型)があります。
一番基本的なものは『Ⅰ型アレルギー反応』です。
まずはここを押さえましょう。

Ⅰ型アレルギーの立役者は『抗体(IgE抗体)』『肥満細胞』です。
そして『感作』という言葉も確認していきましょう。
聞き慣れない用語ですがひとつづつ見てみましょう。

『抗体(IgE抗体)』『肥満細胞』『感作』とは?

『抗体』とは、一般的に
特定の異物(アレルゲン/抗原)に結合して、その異物を生体内から除去する分子です。
異物(アレルゲン/抗原)が体内に入ると、人体はその異物(抗原)とだけ結合する抗体を作り、異物を排除するように働きます。

ウイルスならウイルスに対する抗体
卵なら、卵のIgE抗体
ダニなら、ダニのIgE抗体
花粉なら、花粉のIgE抗体
といった具合です。

このように、体の中に、抗体(IgE抗体)が作られることを『感作』と言います。
IgE抗体は、その値が高いほどその物質に反応しているといえます。

一方、体の中には肥満細胞という細胞があります。
肥満細胞の中には、ヒスタミンなどのアレルギー症状を起こす物質が蓄えられています。
そして肥満細胞の表面には、抗体がくっつく場所(受容体)があります。

Ⅰ型アレルギーの機序は?

Ⅰ型アレルギーの機序は

特定の異物(アレルゲン/抗原)が体に入り
専用のIgE抗体が結合し
肥満細胞の表面にある受容体とくっつくと
肥満細胞の中からヒスタミンなどの物質が撒き散らされる!
ことで起こります。
ちなみに、花粉症は、この抗原が『花粉』というわけです。

Ⅰ型アレルギー 機序

目がかゆい
鼻水が出る
咳が出る
蕁麻疹がでる!
これらは、簡単にいうと肥満細胞から放出された『ヒスタミン』の作用です。

 

なので、アレルギーの症状を緩和するお薬として『抗ヒスタミン薬』を使用します。
後述するステロイドとは異なり、『免疫力を落とす』作用はありませんので
安心してくださいね。

 

●アトピーマーチとは_?

このようにヒスタミンによっていろいろな症状が引き起こされるので
アレルギー関連の病気はたくさんあります。

アトピー性皮膚炎
食物アレルギー
気管支喘息
アレルギー性鼻炎/結膜炎
蕁麻疹
などなど

 

実は年齢とともにどのアレルギーの病気になるかは大体決まっています。

アトピー性皮膚炎食物アレルギー気管支喘息、アレルギー性鼻炎/結膜炎/花粉症

というパターンで進むことが多いとされています。
これをアトピーマーチと言ったりします。
まずは、アトピー性皮膚炎で始まって、食べ物のアレルギーが出てきて
大きくなると、喘息や花粉症に悩まされる。。。。
と言った具合です。

 

●花粉を例におさらいしましょう。

例えば
本来なら寛容されてほしいはずの花粉を
異物とみなしてしまうと
『花粉専用IgE』が作られてしまう。(感作)
花粉専用IgEができている人が
花粉と接すると、花粉と花粉専用IgEが結合し
肥満細胞にたどり着きます。
肥満細胞の表面の受容体に、花粉と花粉専用IgEが結合したものがピタッとハマると
肥満細胞の中から、ヒスタミンなどの物質が撒き散らされ
様々なアレルギー症状が引き起こされてしまいます。

イメージは湧いたでしょうか???アレルギー症状

 

アレルギーにおいて大切な臓器は
『皮膚』『腸』と言われています。
『経皮感作』『経口免疫寛容』とは???

 

さて、『アレルギー』は、『過剰な免疫反応』ということがわかりました。

ウイルスとか細菌とか
本来は体に必要ないものは
体としては追い出したいので
免疫はなくてはならないものです。

でもできれば大目に見てほしい(寛容してほしい)ものにも
過剰に反応することをアレルギーというのでした。

 

では、どこからその異物(アレルゲン/抗原)は体の中に入り込んでくると思いますか?

入り込んでくるのは、主に体の外と内を分けている場所です。
大事なのは『皮膚』『腸』と言われます。

まず皮膚ですが・・・

実は、炎症のある皮膚は、アレルギーを起こしやすいことが分かっています。

皮膚に炎症がある(湿疹)と言うことは
すでに皮膚表面で
何らかの異物があり
免疫に関わる細胞が異物を押し出そうとしている状態です。

そんな免疫の混乱のさなかで
ホコリ(実際は中に食べ物カスが混じっている事が多い)と
荒れた皮膚に接するとどうなるでしょうか?

荒れた皮膚というのは
上記のようにすでに
免疫学的にさかんに異物を押し出そうとしている状態で
本来なら反応しなくていいはずの物質に対しても
間違えて排除しようと、さかんにIgE抗体を産生(感作)するようになります。

このように
バリアが弱くなっているために
皮膚を通して、(本来は作ってほしくないものに対する)IgE抗体を
獲得するようになることを『経皮感作』と言います。

なので、アレルギーを予防のために
部屋をこまめに掃除しましょう!
と言われます。
確かに
家の掃除は大切なことですが
残念ながら
ホコリや、小さな食べ物カスを完全に取りきることは不可能です。

そこで掃除と並行して
大事なことは
もし皮膚が荒れているなら
まず皮膚のコンディションを整える必要があります。
つまりはスキンケアがとてもキーポイントになります。

 

スキンケア大事

 

つぎに、腸ですが・・・・

何かを食べて
それを排除せずに
自分の栄養素として、受け入れて取り込むことを『寛容』と言うとお話しました。

つまり、腸には
異物を体に受け入れるように働く能力があります。

口から食べて腸から取り込まれるという
ある意味で異物と「適切」に接することで
異物を寛容し
アレルギーを起こさず受け入れる能力を『経口免疫寛容』と言います。

『経皮感作』『経口免疫寛容』というふたつの大切な
考え方がアレルギーにおいてとても大切な軸となっております。

 

 

大切なことなので、もう一度言います。
皮膚を、なるべくきれいに保つことが肝要です。

上記で説明したように
アレルギーの発症に重要な役割をきたしているのは
『皮膚』『腸』のようです。

皮膚を、きれいなバリアを保った状態にしておくことは
アレルギーを引き起こさないためにも
さらに、悪化させないためにとても重要です。

家の中には、しらずしらずホコリがあり
その中には、アレルゲンがたくさん入っています。
炎症のある肌からは、すぐにアレルゲンが侵入し、感作されてしまいます。

なのでもし
肌が荒れている場合は
一刻も早く肌を正常化し守って上げる必要があります。

そこでキーとなるお薬が「ステロイド」となります。

●ステロイド塗布薬に関する考え方

 

ステロイド塗布薬

『ステロイド』と聞くと
免疫力がおちる?_
何やら、怖いもの。
できたらやめときたいもの・・・・
そう考える方は多いです。

でも炎症を抑えるのに
ステロイドはやはりすごく良いお薬です。

アレルギーは『過剰な免疫反応』という話をしました。
この過剰な免疫反応を抑えてくれるお薬こそが『ステロイド』です。

たしかに、必要がないのに、漫然とステロイドを塗布することは
よくありません。
おっしゃるとおり、ステロイドは
炎症を抑える、つまり敵(異物/抗原)が来ても戦わせないので
ある意味『免疫力』を落としているお薬といえます。

さらに、例えばステロイドの塗り薬を漫然と使用すると
『皮膚が菲薄化(薄くなる)』したり『毛細血管を拡張』したりといった副作用
を来してしまいます。

でも上記のように荒れた皮膚からは
アレルギーが起きやすいので
適切にステロイドを使用することです。
アレルギー反応を少なくして
結果的に一生でステロイドの総使用量をへらす!
ということが大切です。

なるべく『必要のない過剰免疫反応だけ』をうまくコントロールする!
という使い方の工夫が必要です。

今はステロイドではない、炎症を抑えるよい薬も出ております。
でもやはりステロイドは、アレルギー治療の軸ということは変わらず
上手に使うとすごく『良い』外せないお薬です。

今回は塗布薬についてお話しましたが
吸入ステロイド、内服のステロイドも同じで
必要なときにはしっかり使って、炎症を抑える(コントロールする)ことは
ひいては一生涯のステロイド使用量を抑えることに繋がります。

●リアクティブ療法とプロアクティブ療法

それでは、肌が荒れているときだけ『ステロイド』を使用して、きれいになったら
やめると良いのでしょうか?

実際多くの方が
見た目の皮膚が荒れている時に
ステロイドを塗るのは抵抗がないけど
見た目がきれいな時は塗りたくない!
と考えて、皮膚がきれいになるとすぐステロイドを中止してしまいます。

この悪いときだけ塗る!というのを
『リアクティブ』療法と言います。

なんとなくよさそうですが
そうすると
どうしても『塗る』→『きれいになる』→『ステロイド塗るのやめてしまう』→『悪化する』
を繰り返してしまいます。

では、『毎日塗るのか?』・・・
それでは、皮膚が薄くなったり、毛細血管が開いてしまいます。
毎日塗るのもよくありません。

そこで最近は
悪化する前に動く『プロアクティブ』療法がよい
と言われて始めています。

これはひどいときはしっかり塗って
良くなってきたら、頻度を減らして
とびとびに塗るけど、やめたりはしない!
というものです。

プロ(まえもって、事前に)アクティブ(動く)という意味です。
悪化する前に防ぐので
結果的に
トータルのステロイドの量は減ることになります。

 

プロアクティブ療法 リアクティブ療法

 

●基本的に毎日、ベースとしてスキンケアは続けます。

ステロイドを塗らない日は何もしないのでしょうか?

繰り返しになりますが

炎症がある時もない時もかかわらず
基本的に、保湿剤は塗り続け
皮膚から蒸発する水分を抑えることが大事です。

炎症がなくても、毎日保湿剤でスキンケアをして
バリア機能を高めておくことが大事です。

 

食物アレルギーについて 少し深堀り。

さてアレルギーの中でも、ちょっと難しい食物アレルギーについて
少しお話を深堀りします。

アレルゲン

つい20年ほど前までは
食物アレルギー=『その食べ物の完全除去』
が主流でした。

IgEが高い=感作されている=体内に入ると反応し症状が出る
ということで、シンプルに完全除去が安全と考えられていました。
この考え方は決して間違いではありませんし、安全ではあります。

でもIgE抗体の値が高くても案外食べてみると食べられることもあります。
また食べることで、寛容されていくことも事実です。

そこで『食物経口負荷試験』
つまり実際食べてみて食べられるか診てみようという流れが出てきました。
『必要最低限の除去』という考えかたです。

先ほど出てきた『経口免疫寛容』という力を期待して
『食べられるなら少しづつ食べさせたほうがいい』のではという考えです。

ただ、どうしてもこの方法はリスクを伴います。
実際に、アレルギーによるショックによる死亡事故も起きています。
どこでもできるわけではありません。
しっかりリスクに備えた環境が整備されている施設が必要です。

申し訳ありませんが、残念ながら、当院も行っておりません。
ぜひ、以下の実施施設をご参照ください。

食物アレルギー研究会 食物経口負荷試験 実施施設一覧

 

どうすれば安全に食べていけるのか?
いつから食べさせるのが良いのか?
現在でも研究は続いています。

アレルギー血液検査についてもう一度考える。

血液検査 アレルギー

さて、アレルギー検査お話も少ししますね。

『〇〇アレルギーがあるように思うので血の検査してアレルギーがあるか調べてほしい。』

外来で患者さんによく言われることです。
このことにもすこし触れていきたいと思います。

結論から言いますと
実際は、『血液検査でアレルギーあるかなしか、白黒つける!』というのは
とても難しいです。

★★もうすでに食べられている食材は血液検査をしなくて良い!★★

血の検査というと
一般的にはIgEを測定することを指します。

でも、血液検査でIgEが高いから絶対食べれないかというとそうではありません

それに少しアレルギーがあるから完全に除去すると、
経口免疫寛容を受ける機会が減ってしまいます。

実際、食べられていて、症状が軽いなら
体調の良い時に食べるというのでよいと思います。

血液検査がすべてではない理由として

血液検査が『陽性』なら食べても症状が出るというわけではない。
血液検査が『陰性』なら食べても症状が出ないというわけでもない。

というのが実際の所です。
なんともはっきりしなくてすみません。
やみくもな検査で、不必要な除去をしてほしくないなあと思います。

ただ保育園入園、学校の入学などで『ある程度きっちり白黒つけておく』必要があります。
保育園、学校という保護者がつきっきりで状態を見れない環境下では
ある程度しっかりリスクを防いでおく必要があると考えています。
基本的には、慣れているアレルギー専門医の先生と
どこまで保育園や学校で除去するか、しないかしっかり相談しながら書類を作成してもらったら良いと思っております。

★★同じく、慢性じんましんの原因は、ほぼほぼ特定できない★★

6週間持続する、蕁麻疹を『慢性じんましん』と言います。
これもアレルギーの一種です。
患者さんからしたら
ずっと繰り返し出る蕁麻疹の原因はなんだろう?
できたら除去してスッキリしたいと思うかもしれません。
でも、残念ながらこれも血液検査で、慢性蕁麻疹を特定することはほぼほぼ不可能です。

慢性蕁麻疹には
採血では計り知れない+α要因が関わっています。

寒さ、運動、寝不足・・・・・

 

そういったものは採血では出てこないです。
やはり血液検査を行う意味は、限定されるかもしれません。

これもスッキリしない答えですみません。

 

 

終わりに

さて、今日はアレルギーをテーマにお話しましたが・・・・
アレルギーはとても深いテーマです。
そして難しいテーマです。

民間療法などもたくさん行われ
いろいろな考え方の方がおられます。

一言にアレルギーといっても
アトピー性皮膚炎
食物アレルギー
気管支喘息
アレルギー性鼻炎/結膜炎
蕁麻疹

と様々な病態で現れますし
今日はⅠ型アレルギーを中心に話しましたが
他の型のアレルギーもあります。

アレルギーを『専門』にされている先生方もおられるように
すごく奥深い分野です。
ただどうしてもすべてを専門医の先生に任せていたら
専門医の先生がパンクしてしまいます。

私のような一般内科では
その一端を担う形で
日々診療させていただきますが
診断や治療が難しい場合はアレルギー専門医の先生にご紹介させていただきますね。

こちらのブログもご参照ください。

総合医と専門医はどっちも大切。患者中心の医療。そして、セッティングによる違いも。

それでは
私も花粉症があるので
しっかり対策取ってまいりたいと思います。

参考になるサイト

・食物アレルギー研究会 食物経口負荷試験 実施一覧→こちら

・アレルギーポータル→こちら

日本アレルギー学会から、患者さんに向けてわかりやすくアレルギーの病気を説明したページ

 

過去の参照ブログ

総合医と専門医はどっちも大切。患者中心の医療。そして、セッティングによる違いも。→こちら

総合医と専門医はどっちも大切。患者中心の医療。そして、セッティングによる違いも。