お子様のインフルエンザワクチン。1回目と2回目の接種の間にインフルエンザに罹患した場合はどう考える?
はじめに
こんにちは。
感染症の季節ですね。
そして、現在、何を隠そう私自身が帯状疱疹に罹患しており、
皮疹は落ち着いたものの、右側の帯状疱疹後神経痛と戦っております。
寒いと余計に痛むため
右側から電気ヒーターを体幹に当てて冷やさないようにしながら、
このブログを書いています。
→帯状疱疹に関するブログはこちら
開業してからこれまで、
毎年発熱外来で多くの患者さまを診せていただいていますが、
今年はなにやら、自分自身の免疫力が落ちているのか、
私自身も風邪をひきやすくなってしまいました。
より一層、
食事・運動・睡眠に気を配りながら、
自分の免疫力も高めていきたいと思います。
さて今日は、
先日たまたま2件続けてご質問いただいた内容について、
「これ、結構あるあるかも?」と思い、
ブログでもお話ししてみることにしました。
インフルエンザワクチンについてのご質問
「1回目を打ったあと、2回目の前にインフルエンザにかかってしまいました。
それでも2回目は必要ですか?」
今回は、
「本来2回接種が必要とされている年齢のお子さん」に対象を絞って
少しお話ししたいと思います。
当院では、お子さまのインフルエンザ予防接種を
このような考え方で行っています。

まず大前提:なぜお子さんは、「2回接種」なのか?
日本および海外のガイドラインでは、
一定年齢の小児では、インフルエンザワクチンは原則2回接種とされています。
その理由は、
-
お子さんは大人に比べて免疫機能が未熟
-
1回接種より2回接種のほうが抗体価が高くなる
-
つまり、免疫をしっかり成立させる目的で「2回接種」
とされているからです。
イメージとしては、
ウイルスが攻めてきたときの「練習」を2回しておいた方が、本番に強いという考え方です。
本題
Q では1回目と2回目の間にインフルエンザにかかった場合は?
結論を先に書きます
「2回目は必ず打たなければならない」とも、
「絶対に不要」とも、一律には言えません。
……うーん、煮えきらなくてすみません。
どういうことか、
順番に見ていきましょう。
考え方①
インフルエンザに「かかった」という事実の意味
インフルエンザに自然感染すると、
-
ワクチンとは異なる形で
ウイルスそのものに対する免疫反応が起こります -
これは
ワクチン1回分以上に強い免疫刺激になる
と考えられています
つまり、
1回目のワクチン + 自然感染
→ 免疫としては「かなり強い」状態
になります。
この点は、
インフルエンザA型でもB型でも共通です。
考え方②
一方で、インフルエンザは「1種類」ではありません
同じシーズンでも、
-
A型(H1N1、H3N2)
-
B型
など、複数の型・亜型が流行します。
そのため、CDC(米国疾病予防管理センター)では、
「そのシーズンにインフルエンザにかかった人でも
未接種であればワクチン接種を勧める」
という考え方が示されています。
つまり、
「かかったからといって、インフルエンザワクチン接種は全く意味がない」わけではありません。
ちなみに、A型とB型の違い
さてインフルエンザの流行といえば、やはりA型が多いです。
■ A型にかかった場合
-
多くの年で、シーズンの中心となる流行株はA型
-
A型に罹患していれば、
その年に問題となりやすいウイルスへの免疫はすでに成立
そのため、
今シーズンに1回目のワクチンを接種し、
その後インフルエンザAに罹患した場合、
2回目ワクチンによる上乗せ効果は、より小さくなる可能性があります。
積極的には推奨しませんが、
「打ってはいけない」わけではありません。
■ B型にかかった場合
-
B型に対する免疫はしっかり入る
-
しかし、
A型(H1N1、H3N2)には自然感染していない
そのため、
「A型への備え」という意味で、
2回目接種を検討する余地が、A型罹患時よりは残る
と考えられます。
まとめ
結局のところ、
-
小児のインフルエンザワクチンは
原則として2回接種 -
ただし、
1回目と2回目の間にインフルエンザにかかった場合・自然感染により、免疫はすでにかなり強く入っている
・2回目ワクチンの「追加効果」は小さくなることがある
特に、
-
A型に罹患した場合:2回目の上乗せ効果はより限定的
-
B型に罹患した場合:A型への備えとして2回目を検討する余地あり
いずれの場合も、
「今シーズンにインフルエンザに罹患したら、ワクチンを2回接種してはいけない」わけではありません。
当院での考え方
当院では、
-
お子さんの年齢
-
実際にかかったインフルエンザの型(A型かB型か)
-
その時点の体調
-
その年の流行状況
-
本人や保護者の気持ち・状況
を踏まえて、
一律ではなく、個別にご相談しています。
迷われた場合は、
どうぞ遠慮なくご相談ください。
おわりに
感染症は、どんなものであれ
とてもつらく、大変なものです。
本人のしんどさだけでなく、
「周りにうつしていないか」
「ワクチンはどうすればいいのか」
など、悩みもつきものです。
答えは一つではありません。
「事実(エビデンス)」と、
その人それぞれの「想い・考え・不安」によって、
正解は変わると思います。
一緒に、
納得できる方法を考えていきましょう。
それでは皆さま、お体ご自愛くださいね。
あん奈
参考文献・情報源(リンク)
-
CDC / ACIP
Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines
https://www.cdc.gov/flu/hcp/acip/index.html -
Grohskopf LA, et al.
Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines:
Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)
MMWR
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/73/rr/rr7305a1.htm
(※年度によりURL末尾は更新されます) -
Immunize.org(CDC/ACIP公式解釈)
Ask the Experts: Influenza
https://www.immunize.org/ask-experts/topic/influenza/ -
厚生労働省
インフルエンザQ&A
参考ブログ
・よくある疾患シリーズ 〜帯状疱疹〜→こちら
・帯状疱疹ワクチンに不活化帯状疱疹ワクチン接種が加わりました。→こちら
・帯状疱疹ワクチンの定期接種が始まります。自己負担額も発表ありました!R7.4月〜→こちら


