よくある疾患シリーズ 〜パーキンソン病というご病気について少しご説明します。〜

こんにちは。
今日は、パーキンソン病についてすこしご説明したいと思います。

パーキンソン病
多くの方がその名前を聞かれたことがあると思います。

そしてなんとなく『大変な疾患』というイメージがあるのではないでしょうか?

パーキンソン病とは、脳神経と関連した疾患です。
私は、一般内科なのでパーキンソン病の専門ではありません。
なのでパーキンソン病を疑う場合は神経内科の先生に、診断とご加療をお願いしております。
ただ下記に示すように、パーキンソン病は決して稀な疾患ではありません。
日常の診療の中で、普通に出会う疾患です。

今日は
パーキンソン病とはどういった疾患か
どういう場合にご紹介させていただいているのか
紹介先でどのような検査が待っているのか
診断がついたらどうなっていくのか
そんなところをお話したいと思います。

決して稀な疾患ではない!

パーキンソン病は
全年齢では1人/1000人の割合で起こる疾患です。

65歳以上では1人/100人の割合です。

 

決して稀な疾患ではありません。

なぜ診断をつけることに意味があるのか?

実は多くの患者さんは
まさか自分がパーキンソン病だとは思わないので
通院されていても相談されませんし、そのために診断がついておりません。

パーキンソン病は
『疑うところから始まる疾患』と言われています。
主治医のみならず、家族、看護師さんやケアスタッフ、リハビリの先生が
その可能性に気がつくと早く診断につながることがあります。

私も自分の患者様の中で可能性がある場合は神経内科にご紹介しています。

でも、患者さんにとったら
診断をつけることに意味があるのかしら?
怖いから知らないままでいいのでは?
と思う方もおられると思います。

でも私は診断をつける意味は大きいと思っております。

なぜなら
しっかり診断がついたらお薬によって体がもっと動くようになることが期待できるからです。

 

どのような経過をたどるのか??

発病から15年までは生存率は一般人口と同じです。
それ以降の経過にはかなり個人差があると言われています。

一般的には
発症当初は、比較的治療薬によく反応します。
その後お薬の効きが鈍くなってきたり、効果がある時間とそうでない時間の差があったりといった問題がでてきます。
なので、一生の中においてそのお薬の調整が、神経内科の先生の腕の見せどころとなってきます。

どういった病気なのか?

詳しい説明は難しいので
すごく簡単に言うと(実際はもっと複雑なのですが)

パーキンソン病の病気の本体は『脳の神経の変性』です。
脳の神経同士の、情報伝達物質である『ドーパミン』という物質が足りなくなって起こります。

ドーパミン

どんな症状があるのか?どういったときに疑うのか?

この神経の情報伝達物質である『ドーパミン』が少なくなることで
様々な症状が出てきます。
症状には、大きく分けて、運動症状と非運動症状があります。

●運動症状(パーキンソニズムといいます。)

無動(動きがおそい ぎこちない)
一番大切なのは『無動』という症状です。
動きが遅く、ぎごちない、表情にとぼしいというような症状です。

・振戦(ふるえ)
安静にしている手が震えるというような振戦が見られます。

・筋剛直(関節の動きがかたい)
これは、医師の診察で診ることですが
肘関節を曲げ伸ばししてみると、『ガクガク』した感じや『金属を曲げるような抵抗』を感じることがあります。

・歩行が小刻み、歩行が遅い
歩き方が小股で、小刻みに歩いていることから気がつくことも多いです。

これらの症状には左右差がみられるとパーキンソン病らしさが高まります。

●非運動症状

実は意外に知られていませんが
パーキンソン病は、運動障害以外に実は様々なありふれた症状を起こします。
患者さん本人も、ご家族さんも、ひょっとしたら内科の医師も
まさかこれがパーキンソン病の一症状だろうとは、その目で見ないと気がつかないこともあります。

・便秘症
ありふれた症状ですのでこれだけでどうこう言えませんが
パーキンソン病の自律神経に関した一症状のこともありえます。

・うつ症状
心療内科に通っておられることもありますね。

・嗅覚異常
コロナウイルス感染症で、急に有名になった嗅覚障害ですが、パーキンソン病の一症状のこともあります。

・排尿の問題(頻尿 過活動膀胱)
泌尿器科に通っておられることもありますので、内科ではおっしゃらないこともあります。

・レム睡眠行動障害
 レム睡眠行動障害というのは約半分の患者さんに認めると言われてい
ます。これは夢を見ているときに、一致して一緒に寝ている人を殴ってしまったり、大声を出したり、寝言をいったりするというものです。

 

パーキンソン病の症状

 

このように、疑って見ないとありふれた症状ばかりですね。
他の科にそれぞれ通ってたり、あまりひどくないから先生に言わないでおこうという場合もあります。

でも非運動症状は、運動症状より先に出ることが多いです。
疑った場合には詳しくお伺いしてまいりますね。

さて
パーキンソン病とパーキンソン症候群。
実は、似て非なるものです。

さてここでパーキンソン病とならべてよく言われる
パーキンソン症候群について触れておきます。

『パーキンソン症候群』とは
先程の、症状のうち
運動症状(パーキンソニズム)を呈する疾患の総称になります。
多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症・・・・
難しい名前が並びますが、こういった変性疾患の全体のネーミングで
それぞれ違う病気です。

そして運動症状が出る点で一緒ですから
パーキンソン病とすごく似ています。
そして区別がとてもつきにくいです。

ただ、ドーパミンが足りないのか?足りないのではなく反応が鈍いのか?
それは脳のどの部分でおこっていることなのか
表現型は同じでもまったく違います。

もう一度いいますと、
パーキンソン病とパーキンソン症候群は、似て非なる疾患です。

疾患が違うので
経過も予後も、各疾患で異なります。

それぞれの詳細は、私にとっても難しいので省きます。
神経内科の先生に診断をしていただいてそれぞれ加療をしていただくことになります。

どういった時に、疑って神経内科の先生にご紹介しているか?

さて私がどういったときに自分の患者さんを
『あれ?パーキンソン病かも?』
と疑うかですが

まずは、上述のように動きをみています。

あれ?すこし動きがぎこちないかな?
というのが疑うきっかけになります。

待合室から診察室まで
歩いてこられる姿も
あれ?小股でゆっくりだな?
というときに気になります。

表情が乏しいなという時も
気になります。

パーキンソン病を疑ったらどのような診察をしているか?

疑ったら先程の運動症状(パーキンソニズム)を調べる簡単な診察を行います。

●運動症状

無動(動きがおそい ぎこちない)
・指タップテスト(親指と人差指をパチパチしてみましょう)
・グーパーグーパー繰り返してみましょう

・振戦(ふるえ)
・膝の上に手を置いて震えるかみせていただきます。

・筋剛直(関節の動きがかたい)

・主に肘関節を曲げ伸ばしして感覚を試します

・歩行が小刻み、歩行が遅い
 ・これは実際に歩いているところを見せていただきます。

●非運動症状

これは問診で、お伺いしていきます。

神経内科へご紹介。
その先ではどんな検査をするのか?

頭部MRIを確認する医師

●神経内科の先生による診察

ご紹介した先で再度神経内科の先生の診察を受けていただきます。
そしてその後で下記のような検査をして確定診断をつけていきます。

 

●頭部MRI

まずは、脳の萎縮があるかどうかを調べます。
パーキンソン病は、パーキンソン症候群とくらべて脳萎縮が目立ちません

●核医学検査

①DaTスキャン(頭部SPECT画像検査)

先ほど紹介した『ドーパミン』を介する神経の変性や脱落を画像で評価するものです。
検査薬を注射して、頭部SPECT写真を撮影します。
この検査では、パーキンソニズムを来す疾患かがわかるだけで
さきほどの、パーキンソン病/パーキンソン症候群の区別はできません。

②MIBGシンチグラフィー

こちらは、パーキンソニズムの存在は分かっている状態で
パーキンソン病かどうかわかるというものです。
パーキンソン病は、MIBGという物質の心筋への取り込みが低下していることを利用します。
同じように注射をして、撮像します。

 

 

 

さて、治療はどんなものがあるのか?

治療の基本は、『ドーパミン』の補充になります。

本態はそうですが
このお薬の効かせ方が神経内科の先生の腕の見せどころになります。

これらのお薬は運動症状を改善させるためのものです。

薬

パーキンソン病の治療薬は勝手にやめないで!!!

さてパーキンソン病のお薬は

絶対に
急にやめたり、減らしたりしてはいけません!!

急にやめると
『悪性症候群』という命に関わる状態が起こることがあります。

なので何らかの状態で
パーキンソン病のお薬が飲めない場合は
点滴に置き換えて投与し続ける必要があります。

胃腸炎、風邪でご飯を食べられないなどで
いつも内服しているパーキンソン病の治療薬が飲めない時は
主治医に報告するか
夜間で主治医が繋がらない場合は
救急病院でも良いですので
必ず受診をして、その旨を医師にお伝え下さい!!!

 

神経内科専門医の先生の役割
我々、かかりつけ医の役割。

今日はパーキンソン病について少しお話しました。

奥が深い疾患です。
上にも述べたように経過は個人差があります。

神経内科専門医の先生とかかりつけ医の先生が連携をとって診ていく必要があります。

お薬は
なるべく少ない量で
なるべく長く効果があるように
調整する必要があります。
この部分は、やはり『餅は餅屋!』神経内科の先生にお願いすることになります。

かかりつけ医、家庭医は何をするか?
非運動症状である、便秘、頻尿などの日々の管理や相談。
血圧などの自律神経に関する管理
患者さんやご家族さんに経過のご説明。
そして、長い経過を経て
今後手助けが必要なことが増えて来たときを見据えて
相談役、ケアマネさんや、訪問看護師さん、ヘルパーさん達と連携を取りながら生活を支えていきます。

手を繋ぐ

終わりに

私の患者様で
何人か、パーキンソン病の患者様を
神経内科の先生と一緒に診させていただいております。

3ヶ月に一度専門医の先生
3〜4週間に一度位の頻度で当院に通っておられます。

どの方も
すこしづつ介護サービスのご利用について
相談をさせていただいてます。
その方々にとって
その時時に必要な介護サービスを一緒に検討していきます。
家庭医は
診断して、紹介して終わり!ではありません。
今後もずっとお付き合いさせていただきますので
『長いお付き合いになりますね〜』
とお声がけさせていただいております。

日々の診察の中では、いろいろ人生観などもお伺いして診療を重ねていきます。
そうすることで
なるべく本人やご家族の希望に沿うような
生活を送れるようにです。

日々話し合いも重ねていきましょう。
これからもよろしくお願いいたします。

 

あん奈