またまた改定!! 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(2025.9.30〜)
こんにちは
当院では
65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン
の予防接種を施行しております。
そのため
過去のブログでもたびたび
「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチンの接種に関する考え方」
を掲載してご紹介してきました。
今回2025.9.30に第7版が公表されたので
また変更点などに触れていきます。
2025.9.30に、「第7版」が改定されました!
・2025年9月30日、日本呼吸器学会と日本感染症学会、日本ワクチン学会は連名で
「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版 2025年9月30日改訂)」
を公表しました。→こちら
・2025年の8月にMSD社より
21価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV21、商品名キャップバックス®)
が高齢者とハイリスク者を対象に
薬事承認されたことを受けたものとされています。
発売は2025.10.29との事です。
まず、略語の確認をしておきます。
●PPSV23:ニューモバックス®(MSD社)
●PCV13:プレベナー13®(ファイザー社)
●PCV15:バクニュバンス®(MSD社)
●PCV20:プレベナー20®(ファイザー社)
●PCV21:キャップバックス®(MSD社)→NEW!!!
肺炎球菌ワクチンの歴史はめまぐるしい進歩です。
★★★ここから少しおさらいを。★★★
●肺炎球菌とは?
唾液などを通じて飛沫感染し、気管支炎や肺炎を引き起こす細菌です。
重症化すると敗血症などの重い合併症を引き 起こすことがあります。
特に肺炎はわが国の死亡原因の第 5 位となっています。
成人の肺炎のう ち1/4 ~ 1/3は肺炎球菌が原因と考えられています。
肺炎球菌は実は、90種類以上のタイプがあります。
特に保育園、幼稚園などの集団生活が始まるとほとんどの子供が持っていると言われています。
●肺炎球菌ワクチンは、大きくわけて2種類あります。
PPSVとPCVといいます。
さて肺炎球菌ワクチン、実は大きく分けて2種類あります。
●PPSVは「pneumococcal polysaccharide vaccine」の略で日本語で「肺炎球菌多糖体ワクチン」
肺炎球菌の表面にある「莢膜(きょうまく)ポリサッカライド(多糖体)」を抗原としたワクチンです。
・PPSV23:ニューモバックス® (MSD社)
●PCV 結合型ワクチン (pneumococcal conjugate vaccine:PCV)
一方、PCVは肺炎球菌の莢膜の一部と「キャリアタンパク」を結合させた結合型ワクチンです。
PCVは、免疫に関わる細胞のうち、B細胞だけでなくT細胞も活性化するといわれており
PPSVよりも長期間にわたる免疫効果が期待できるという特徴があります。
・PCV13:プレベナー13®(ファイザー社)
・PCV15:バクニュバンス®(MSD社)
・PCV20:プレベナー20®(ファイザー社)
・PCV21:キャップバックス®(MSD社)
●肺炎球菌の定期接種とは?
定期接種とは、公費(一部自己負担あり 4300円)で受けられる予防接種です。
対象者は現在は下記に当てはまる方だけです。
定期接種で接種するワクチンは
・PPSV23:ニューモバックス® (MSD社)
です。
それ以外は、任意接種(全額自費)となります。
また下記対象者でも
過去に高齢者用肺炎球菌ワクチンの接種を受けたことがある方は対象外となります
大阪市のHPは→こちら(2025.4月更新)
●各種ワクチンを見ていきましょう。
●『ニューモバックスNP®』(PPSV23)(MSD社)
ニューモバックスは、90種類もあるうちの23種類の型の肺炎球菌をカバーすると言われています。
肺炎球菌感染症の原因菌のカバー率は65〜68%となっています。
効果は5年です。
そのため今までは5年ごとにニューモバックスを接種していましたが
第7版からは、ニューモバックスを打ったことがある人には
次回は一年後にPCV20か21の接種が勧められております。
●『バクニュバンス®』(PCV15)(MSD社)
プレベナー®(PCV13)に加えて更に、22F、33Fという型が追加された15価ワクチンです。
ニューモバックスと組み合わせ連続投与することで
どちらにも被っている型に関して
より高い効果が得られると考えられます。
★★PCV15(プレベナー15®)接種後のPPSV23(ニューモバックス®)投与について★★
さて、PCV15(プレベナー15®)を接種後にPPSV23(ニューモバックス®)を接種することも
推奨されていますが
これはなぜでしょうか?
それは免疫のブースター効果を期待していると言われています。
★★ブースター効果とは★★
自然感染または予防接種によってできた免疫は時間の経過によってだんだん弱くなります。
そこで、ふたたび抗原に接触することで、より免疫の機能が強まることを指します。
追加免疫効果と言う意味合いです。
成人では PCV15(プレベナー15®) 接種後に
ある一定間隔を設けてから
PPSV23 (ニューモバックス®)を摂取すると
両ワクチンに共通している血清型に対する特異抗体のブースター効果が期待されます。
接種間隔については1年から4年以内に行うことが推奨されています。
また順番が大事でニューモバックス後のプレベナーではニューモバックス以上の効果は得られないとのことです。
●『プレベナー20®』(PCV20)(ファイザー社)
『プレベナー20®』は肺炎球菌の中で、20種類の型の肺炎球菌をカバーすると言われています。
日本における肺炎球菌の血清型を
ニューモバックスNPと同様にカバーでき
一生効果が続くので一生で1回きり接種で良い
と言われて登場した第6版の改定時
すごく反響を呼びました。
●『キャップバックス®』(PCV21)(MSD社)NEW!!!
さて、今回の話題の中心は
この『キャップバックス®』です。
プレベナー20より効果の優れているプレベナー21が登場したとのことで話題です。
2025年 8月に国内で高齢者とハイリスク者に対して薬事承認されたばかりです。
高齢者に特化して研究された、今までとはコンセプトの異なるワクチンです。
今月の末(2025.10.29) に発売となります。
PCV13、PCV15、PCV20, PCV21 は安全性、免疫原性には大きな違いが認められず
血清型カバー率については
PCV20 は PCV13 及び PCV15 より優れており
PCV21 はさらに PCV20 より優れていると考えられています。
大きな変更点!
ニューモバックス®の5年毎の接種は選択肢としてなくなる!?
第6版ではPPSV23(ニューモバックス® MSD社)は
「接種後5年以上の間隔をおいてPPSV23を再接種することが可能である」
となっていましたが
第7版ではその記載が削除され
「PPSV23接種後の再接種を原則として選択肢としない」ことが明記されています。NEW!!!
なのでこれまで
ニューモバックスを5年毎接種してこられた方も
次回はPCV20(プレベナー20®)かPCV21(キャップバックス® 2025.10.29発売)を
次回はご検討ください。
さっそく、比べてみましょう!
●第6版では
引用:
65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 (第6版 2024年9月6日) →こちら
●第7版
引用:65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 (第7版 2025年9月30日)→こちら
第7版で推奨されている
肺炎球菌ワクチンの接種の仕方を見てみましょう。
第7版はかなりシンプルな図になりましたね。
ワクチン接種については
(1)PPSV23 (ニューモバックス®)未接種者(一度も接種したことない方)
(2)PPSV23(ニューモバックス®)既接種者
(3)PCV既接種者
に分けた対応が示されています。
例によって言葉で説明したほうが難しいので
図を見ながら行きましょう。
引用:65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方
(第7版 2025年9月30日)→こちら
①65歳なら・・・
「定期接種」として公費で接種可能な「ニューモバックス®」をまず受けましょう!となっています。
②「ニューモバックス®」を受けたことがなく65歳でないなら(定期接種対象者でない)・・・
選択肢は
・PCV20か
・PCV21か
・PCV15を接種後にニューモバックス®を連続接種(→後述)する
の3択となります。
③ニューモバックス®をこれまで接種したことがある方は・・・
・PCV20か
・PCV21の接種
④PCV15(プレベナー15®)という少し前のPCVを摂取している方は・・・
・PCV20かPCV21を1年経てば接種可能
おわりに・・・・
本当にワクチンで進歩が激しいですね、、、
情報に追いついていくのだけでも忙しいです。
みなさまも
これだけ巷にワクチン情報が
溢れていたら
何をどうやって信じればよいのやらと悩まれるかもしれません。
ぜひお気軽にご相談ください。
あん奈
参考過去ブロク
・成人の肺炎球菌ワクチンについて (2025.4月更新) プレベナー20®の登場による変更あり→こちら