よくある疾患シリーズ 〜熱中症の分類が2024のガイドラインから変更になりました。〜

こんにちは。

暑い。。。
暑いですね。。。

連日、熱中症疑いの患者様の点滴を行っています。

 

犬と扇風機

この季節は、やはり「熱中症」について取り上げないと
いけないかなという気持ちになります。

過去の記事はこちらです。→こちら

●よくある疾患シリーズ 〜そろそろ、熱中症の季節です〜[2023/07/3 更新]→こちら

はじめに

近年、熱中症の発生件数は増加しております。

地球温暖化
ヒートアイランド現象・・・

そういったことが熱中症の発生増加に影響していると言われています。

6月〜9月が熱中症による救急搬送が多く
まさに、この7月〜8月がピークを迎えます。

 

熱中症のおさらいをしましょう。

今年も厚生労働省の「熱中症を防ぐために知っておきたいこと」
熱中症予防のための情報・資料サイトは充実しております。→こちら

●熱中症の症状

熱中症の症状

 

厚生労働省の「熱中症を防ぐために知っておきたいこと」
熱中症予防のための情報・資料サイトより→こちら

 

●熱中症予防のために

熱中症予防のために

 

厚生労働省の「熱中症を防ぐために知っておきたいこと」
熱中症予防のための情報・資料サイトより→こちら

 

●特に高齢者は気をつけましょう。

日本では、総務省消防庁が熱中症による救急搬送データを毎年公表しています。→こちら
搬送例の年齢内訳は、やはり高齢者が多くを占めます。
またその多くが屋内発症です。

高齢者の場合は、エアコンを使用しないヒトも多く
暑さに対する身体的な機能も若者に比べると落ちているのが原因です。

高齢者は特に注意が必要厚生労働省 高齢者のための熱中症対策 →こちら

 

水分と、塩分をバランスよくこまめに取ることが必要です。

 

水分と塩分

厚生労働省 高齢者のための熱中症対策 →こちら

 

●もし、熱中症と思われるヒトを見たら・・・

職場や道端
もしくは介護などで自宅に入って
熱中症と思われる症状のヒトをみたら
まずは簡単な応急処置として下記のようなことができます。

 

熱中症応急処置

厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト→こちら

もし、応急処置でも改善しない
見た目に重篤な状態
水分を飲めないという場合
ためらわず救急車を呼んで構いません。

熱中症は命に関わる病態を起こすこともあります。

 

下記フローチャートも参考になります。

 

 

  熱中症での応急処置

厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイトより→こちら

 

 

熱中症のガイドライン
2024では、Ⅳ度に分類変更になりました。

さて、前回熱中症のブログを書いたのは2023年の7月でした。
その後更新もしていたのですが
実は、2024に、実は熱中症ガイドラインが改訂されておりました。

一つ前の熱中症ガイドライン2015年と
今回最新の2024年のの熱中症ガイドラインでのひとつの大きな変化としては
今回の改訂で重症度分類が4段階となったことです。

前回のⅠ度Ⅱ度はそのままで、Ⅲ度が2つにわかれました。

 

以前の分類では、こうなっていました。

熱中症の重症度分類と症状

日本救急学会 熱中症に関する委員会 環境省熱中症保健マニュアル→こちら

2024の改訂では

 

 

熱中症ガイドライン 2024

熱中症診療ガイドライン 2024 日本救急医学会 →こちら

これまでⅢ度(2015)としてきた重症群の中に
さらに注意を要する最重症群があり、これを「Ⅳ度」と同定して
基本的に集中治療室で早急に治療を開始する必要があると提唱されました。

重症度分類に沿って見てみましょう。

●熱痙攣(Heat cramp)Ⅰ度

照りつける太陽のイメージ

これは、典型的には
たくさん運動して、
汗をいっぱいかいて
塩分も水分も失ったのに
水分だけが補充された状態です。

手足や足を「つった!!!」いわゆる「こむら返り」という症状で来院されることが多いです。

あまり体温上昇はなく、熱は高くありません。
徐々に回復しているのなら、現場で様子を見られても良いです。
口から水分や塩分を補給して涼しいところで休むことが大事です。

→→→来院されましたら生理食塩水などの点滴をさせていただきます。

 

 

●熱疲労(Heat exhaustion)Ⅱ度

 

熱疲労のイメージ

 

これは、汗で
塩分も水分も大量に失った場合を指します。
熱が上がることが多いです。

血管の中がカラカラになり血圧が下がることもあります。

体の筋肉が壊れてしまい(横紋筋融解症)
腎臓にその成分が詰まる事で
急速に腎臓が痛むことがあります。(急性腎不全)

コーラ色の尿が出たら要注意です!!!

→→→この場合も水分と塩分の補給が大事です。

経口で摂取できない場合は、生理食塩水の点滴が必要です。

筋肉が壊れることで、腎臓が傷んでいるようなことがあればその対処が必要です。

→→この場合には、後方病院にご紹介になります。
 入院管理が必要となることが多いです。

 

●熱射病/日射病(Heat stroke)Ⅲ度

熱射病のイメージ

Ⅲ度以上の熱中症は重篤な合併症の有無で判断します

意識が低下したり
肝臓や、腎臓の機能が低下したり
血液凝固能の異常が起きたり
全身症状が出始めます。

このようなことが一つでもあれば、Ⅲ度以上です。

基本的に大きな病院にご紹介します。
意識がない人を診たら、そのまま救急搬送でも構いません。

下記の2つのタイプに分けて考える事もできます。

①古典的日射病(非労作性熱射病)

基礎疾患(脳梗塞や心筋梗塞)がある方
アルコール依存症
一部の内服治療中(利尿剤など)
高齢者、乳幼児が高温環境に置かれた場合

体温調節機能が破綻します。
そのため体温がかなり高くなり
それなのに汗が出ず意識を失います。
不運な時は命にも関わります。

 

②運動性日射病

高温の環境での、運動、労働で熱の産生が放熱を上回った状態。

この場合も全身の筋肉(横紋筋融解)、場合によっては全身の臓器が痛みます。

昔はど根性で水も飲まずにトレーニング!!!
ということがあったようですが
ダメです!!!危険です。命に関わります!!!!
適切な環境でトレーニングしましょうね。

 

 

●熱射病/日射病(Heat stroke)Ⅳ
→NEW!!! 2024の改定では今までⅢ度としていたものの中から最重症のⅣ度が提唱されました。

さて、上記お話したように、このたびの2024のガイドラインでは
今までのⅢ度の定義に加え

深部体温が40.0以上でかつ
意識障害がある。下記
GCS≦8(後述)

という基準に当てはまる時をⅣ度と新たに設定しました。
Ⅳ度は最重症です。特に、救命率が低く速やかに集中治療につなげる必要があります。

 

集中治療室では
積極的に体を冷却する方法が様々あります。
合併症や後遺症を予防するために
全身管理も必要になります。

 

ちょっと寄り道・・・・☆意識障害スケール(GCS:グラスゴー コーマ スケール)☆

 

さて、意識障害の程度は
GCSというスケールを使って評価します。

下記の様に
目を開けられるか?
話せるか?
動けるか?

の点数の合計で評価します。

 

GCS

熱中症Ⅳ度では
この合計得点が8点以下の意識障害がある場合を指します。

さて、熱中症の診察ではなにを診ているのでしょうか?

基本的に熱中症の診断は
問診で、発生状況を確認しつつ
その他の体温が上昇する疾患との鑑別をしております。

診断に必要な検査というよりは
その他の病態の除外や重症度判定の目的で

・採血
・尿検査
・心電図
・胸部レントゲン
・腹部エコー
・頭部CT

などを行うことがあります。

 

自宅でできる!効果的に体を冷やす方法

扇風機で涼む男の子

さて効果的に体を確実に冷やすためには、

涼しい場所への移動
発汗がない場合は霧吹きなどで体の表面を湿らせて扇風機やうちわで扇いでみるのも効果的です。

 

また、体の表面を走る太い血管を冷やすのが効果的です。
具体的には、首の両脇、脇の下、股の付け根など。
そこに、保冷剤や氷まくら、冷たいペットボトルをタオルなどで包んで当てましょう。
体を効果的に冷やすことができます。

たかが熱中症と思わず迷ったらご連絡ください。
状態によっては、そのままクリニックは飛び越えて救急車を呼んでください!とお話しさせていただくこともあります。

熱中症に、熱冷ましには意味がない!!

ちょっと意外に思われるかもですが、
熱中症の発熱には
熱冷ましが効かない
のはご存知ですか?

熱中症は
物理的に冷やす必要があります。

熱冷ましは、発熱のメカニズムとして熱中症には全く関与しないことが分かっています。

 

 

 

おわりに・・・・

今年もお熱中症に関するお話しました。

根本の考え方は変わっていないものの
2024には熱中症ガイドラインも改訂しておりました。

 

熱中症の正しい知識を身に付けて
今年も暑い夏を乗り切りましょう!

あん奈

 

 

過去の参照ブログ

●よくある疾患シリーズ 〜そろそろ、熱中症の季節です〜[2023/07/3 更新]→こちら

よくある疾患シリーズ 〜そろそろ、熱中症の季節です〜[2023/07/3 更新]