よくある疾患シリーズ〜貧血について② 鉄欠乏性貧血、いわゆる『テツケツ』について〜

さて、今日もよくある疾患シリーズです。

前回は『貧血全般について』お話ししました。→こちらです。

その中で、よくある鉄欠乏性貧血は改めてまたお話ししましょう!となっておりました。
今日はその鉄欠乏貧血について詳しくお話ししたいと思います。

略して、「テツケツ!」と呼んだりします。

ちょっとおさらい・・・

ちょっとおさらいをしましょう。

血液は、血球成分と、血漿成分(水気の部分)に分けられ
血球成分は、さらに「白血球」「赤血球」「血小板」に分けられるのでした。

赤血球の中には、酸素を全身に運ぶ「ヘモグロビン」という物質があり「H b」と表記します。

「ハーベー」と呼ぶと、「おや?!同業者?」となるかもです。(笑)

 

そして貧血というのは、このヘモグロビンが

男性<13g/dl   女性<12g/dl

と定義づけられているのでした。

貧血の原因のイメージ
Causes of Anemia

貧血の原因は、大きく分けて「出血」「赤血球が壊れる」「赤血球が作られない」「その他」など
に分類ができます。

その中でも今日は
その中でも、「赤血球が作られない」もの
その中でも、材料となる「鉄が足りない」もの
という鉄欠乏性貧血についてお話しします。

もっと詳しくおさらいしたい方はこちら→〜貧血について① 全般について〜

鉄欠乏性貧血について

鉄欠乏貧血

・どんな疾患でしょうか

さて、「鉄」が足りないと赤血球を作れなくなります。
また作られた赤血球も小さいという特徴があります。
血の球が小さいことを「小球性貧血」と言います。

鉄が足りない原因も様々あります。

・出血で鉄を失う
出血の中でも、女性は婦人科系、月経により血液を失うことによる鉄欠乏貧血が多いです。
普通の月経だけでなく、不正出血していないか調べることも必要になってきます。
それ以外にも出血源がある可能性があります。
一番診ておかないといけないのは、「胃」「大腸」です。
「胃がいたい」、「黒い便が出る」などの消化器症状がある時は、胃カメラ、大腸カメラが必要になってきます。

・鉄の摂取が少ない
食事などで、鉄を摂る量が少ないのも原因になりますね。
これは下の鉄を含む食事というところをご参照くださいませ。

・鉄を吸収できない
せっかく食事でとった鉄ですが、身に付くためには、胃で吸収しやすい形に変わり腸で吸収する必要があります。
胃や腸に問題があると吸収ができず、結果的に鉄が足りないということもあります。
こちらも胃カメラや腸カメラが必要になるかもしれません。

甲状腺という首のところにある臓器の働きが悪くても鉄の吸収を妨げられると知られています。
治療の際は、甲状腺機能も併せて検査して参ります。

・診断はどうするのか?

さて、鉄欠乏性貧血かどうかは、例によって採血が大事です。
先ほど話したような「小さい赤血球」かどうか(小球性かどうか)
血清鉄の血中濃度はどうか調べていきます。
血液の中を漂う鉄の他に
貯金のように体に蓄えている鉄も調べることができます。
この貯金のように蓄えている鉄の名前は、「フェリチン」と言います。
このフェリチンは、今後鉄をどこまで補充していくかの指標にもなる大事なものです・

フェリチン、フェリチン・・・
可愛らしい名前なので
よかったら名前を覚えてあげてください(笑)

・出血源を探ることも大事

さて「鉄」が欠乏している原因が出血であれば、いくら補充してもどんどん失っていきます。
月経がある女性はほぼ、月経によるものと考えられますが
男性、閉経後の女性、上記述べたようになんらか症状があれば
出血源を探る精密検査が必要になってきます。

胃カメラ、大腸カメラをまず考えていきます。

・症状は?

症状は、全般のところでも述べましたが→こちら
めまい」や「立ちくらみ」を感じる方もいれば、慢性的な経過なので「慣れてしまって感じない」方もいます。

酸素が足りず、「息切れ」「動悸」を感じることもあります。

その他に、鉄欠乏貧血に特有な「爪が薄くなる」「氷が好きになる」というのもあります。

そのほかに貧血はなくても鉄が足りないというだけも、様々な症状があると言われています。

 

・貧血がなくて、鉄が足りないだけでも様々な症状が・・・

実は貧血がなくても、「鉄が足りない」とそれだけで様々な症状が出てきます。

この代表は、「疲れやすさ(倦怠感)」です。

そのほかに「失神を起こしやすい」「片頭痛を合併しやすい」などの報告もあります。片頭痛に関する記事はこちらをご参照ください。→こちら

また、お腹が張る、胸焼けする、抑うつ気分、筋肉痛、むずむずあし、むくみなどの原因が鉄欠乏によるものということもあります。

なので、体調不良がある場合は、一度鉄を調べてみても良いかもしれません。

 

・治療はどうするか?

治療は、鉄の補充になります。

基本的には、お薬による内服治療です。

ただこのお薬は、吐き気などの症状が出やすく、続けて飲めない方もおられます。
そういう場合は、注射による補充も可能です。

基本的には、ヘモグロビンの値を見ながら補充していきますが、ヘモグロビンの値が改善しても基本的には体に十分な貯蔵ができるまで(フェリチン値の改善)投与を継続していきます。

 

鉄を多く含む食べ物のご紹介

もちろん、食事にも積極的に「鉄」を取り入れたいですよね

鉄を含む食べ物

食品に含まれる鉄分には
肉や魚の赤身に多く含まれる「ヘム鉄」
野菜や穀類、豆腐、海藻類などに多く含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。
吸収しやすいのはヘム鉄の方だそうです。ただこのヘム鉄を含む食べ物は、食べにくいのが難点です。

一方の非ヘム鉄は、ヘム鉄に比べると、吸収率は低いですが、食べやすく、食べ方によって吸収率を上げることができるのでうまく組み合わせると良いですね。

ヘム鉄が多い主な食品(可食部100g当たりの含有量)

なかなか食べにくい食材のラインナップです。。。

・豚レバー(生)……13.0mg
・鶏レバー(生)……9.0mg
・牛レバー(生)……4.0mg
・牛肉(生・赤身)……2.8mg
・砂肝(生)……2.5mg
・まいわし(生)……2.1mg
・かつお(生)……1.9mg
・まぐろ(生・赤身)……1.8mg
※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より→こちら

非ヘム鉄が多い主な食品(可食部100g当たりの含有量)

こちらは、比較的手を出しやすいのではないでしょうか?

・納豆……3.3mg
・小松菜……2.8mg
・枝豆……2.7mg
・ひじき(鉄釜・ゆで)……2.7mg
・厚揚げ……2.6mg
・サラダ菜……2.4mg
・そら豆…………2.3mg
・水菜…………2.1mg
・ほうれん草…………2.0mg
※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より→こちら

 

こちらのホームページも非常に分かりやすくまとまっておられました。

ぜひ、併せてご覧ください。

 
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★体内に吸収されにくい非ヘム鉄をうまく取り入れる工夫

非ヘム鉄は、ビタミンCや良質なタンパク質と一緒に摂取することで、体内への吸収力を数倍にも高めることができるそうです。ビタミンCを多く含む食材には、パプリカ、ブロッコリー、ケール、モロヘイヤ、かぼちゃなどがあります。良質タンパク質と言えば、動物性タンパク質、肉ですが、肉と一緒に非ヘム鉄を多く含む小松菜やほうれん草などの野菜を炒め合わせたりすれば、効率よく吸収できるそうです。これなら、美味しそうですし比較的簡単に上手に鉄を取り入れられそうですね。

★一方で、鉄分の吸収を阻害する成分もあります。

  • タンニン
    コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれます。鉄剤を内服するときは、これらで内服しないようにしましょう。
  • リン酸塩
    加工食品やインスタント食品に含まれています。一緒に食べないようにしましょう。
    というか体には良くないので、なるべく食べないようにしたいものです。(反省・・・)
  • フィチン酸
    玄米、ライ麦、穀物の外皮などに含まれます。なんとなく健康に良さそうで、健康のためにこれらを取り入れることがあるかもですが鉄を積極的に取り入れたいときはこれらのものを同時に摂らないなどの工夫がいりますね。

おわりに。。。。

さて、今日は貧血の中でも、鉄欠乏性貧血について詳しくお話ししました。
貧血の中でも、頻度の多い「鉄欠乏貧血」ですが、奥の深い疾患ですね。

さあ、今日も、鉄分もしっかり摂って
元気出して参りましょう!

あん奈