独居の方のお看取りでした。訪問看護師さんやヘルパーさんケアマネさんのおかげで無事穏やかに旅立たれました。

先日、独居の方のお看取りがありました。
いわゆる『血液のがん』といわれる末期状態の70代男性Kさん。

全体を通してとても感動したり、勉強になったり、新しい素敵な出会いがあったり
思い出深いケースになりました。(どの方も決して忘れることはないですが。)

出会いは一本のお電話から。
初めてご一緒する事になる、訪問看護師Yさんからでした。

訪問看護師さんからの電話

お伺いすると
独居で
抗がん剤を含め何もかも内服拒否で
今まで通ってた病院では看護師さんたちに暴言などもあり
いわゆる『ちょっと対応に周りが困っている方』
とのことでしたが。。。。

 

訪問看護師Yさんのお話を聴いているうちに
『うん、この訪問看護師さんがついていれば大丈夫だな。なんとかなるな』
と強く思いました。

というのも
訪問看護師さんのお話が
一貫して
『この方をこの方の好きなように地域で最期まで生かしてあげたい』
という主旨だったからです。

最初から最期まで
『抗がん剤とか飲んでくれないんですよ〜』とか
『手を焼いているんです』
『困った人です』
というようなニュアンスは全く感じられませんでした。

その後にこちらからおかけしたケアマネさんも同じような気持ちでした。
なら大丈夫だなと
そんな感じで訪問が始まりました。

訪問診療のご相談は
いろいろな始まり方があります。
ご家族からだったり、ケアマネさんからだったり、地域包括センターだったり、、
このように訪問看護師さんからということも。

でも初めての訪問看護ステーションだったので
『どうしてYYCにかけてくださったんでしょうか?』
とお伺いすると私がとある勉強会で公演していたのを聴いたことがあったらしく
それで直接お電話をくださったとのことでした。
ありがとうございます。

熱心で志の高い看護師さん、ケアマネさん、ヘルパーさん、医師というのは
日々、あんなに仕事で疲れていても
寸暇を惜しんで、お金を払ってまで勉強会に行かれたりされてます。

自分たちのスキルをもっと上げたい
自分たちの普段やっていることをちゃんと『正しい事をやっている』と礎になるような芯を持っていたい

そんなお気持ちで
いつでも、スキル、知識、経験をブラッシュアップさせています。
本当に尊いことだと思います。
そんな方々のおかげで様で
地域の医療が守られているのだなあと本当に実感する毎日です。

ところで
私が以前に在籍していた訪問診療クリニックはとても恵まれていてスタッフも多く
事務さん、診療同行看護師さん、医師の少なくとも3人で伺い
相談しながら診療をし
帰ってからも迷う症例ならみんなでカンファレンスをして・・・
という環境が整っていました。
時には担当の訪問看護師さんを交えてディスカッションをしたり。。。
今思っても最高の環境でした。

 

でも大阪に来て、開業して周りを見渡すと
小規模の訪問看護ステーションもたくさんあります。
看護師さんが3人位で頑張っておられるところも。
それにまあ、当院も小規模なクリニックでして。。。
こういった小規模で地域を守っているケアラーたちは
多くはお一人で、自転車や車を運転して
お宅までいき、診療行為なり看護行為なり、介護行為などをしています。

 

訪問診療 自転車で

 

どんなところでも一人で出向き
ご本人とだけお会いして
正直なところ
怖い気持ちもあると思いますし
時には、おむつ替えで怒鳴られたり、理不尽な事を言われたりすることもありやるせなさを感じる時もあるでしょうし
果たして自分のやっているケアはこれでいいのか?と迷う時もあるなかで

継続して関わって行きますが
そこには、やはり『一本筋の信念』というか」
『これでいいのだ』
『この診療/看護/介護はこういう方向に向かっているのだ』
という確かなものがないとかなり不安になると思います。
なのでなんらかの形で、チーム間で
『同じ方向を向く努力や工夫』は絶対に必要だと感じています。

 

そんな中で
私達は、MCSというアプリを使用して
診療の方針や進捗
お互いの想っていること
どのような事をおっしゃっていくか確認し合うことにしております。

メールのやりとり

 

 

 

初めは
本当に連絡事項のようなことや医学的な事をやり取りがメインでしたが
私の中では
『次、自分が行ったら呼吸が止まっているかもしれない』という中で
ヘルパーさんたちの中にはお一人で、お宅に向かわれること怖いと想っている方もいるだろうな?
本人はもともとの性格や、病気の状態から怒ったり、処置や介護もスムーズに行かないこともある中で
迷うこともあるだろうな?と思って
『是非、このMCSでは、連絡事項だけでなくみなさんの思いなども吐露しあって、このチームのグリーフケアも進めていきませんか?』お伝えしたところ

 

本当に関わってくださっている皆さまが
いろいろそれぞれの関わり、交わした会話、想いを教えて下さいました。
そのおかげでいかにみなさんが

温かい想いで接してくださっていたか
そして深く関わった人しか分からない細かな情報をたくさん集めてくださっていたか?

に触れることができ
正直な感想として『Kさん、本当に羨ましいひとやなあ』と思いました。

リアルに交わした会話
管理人さんとの意外なつながり
ご本人のご家族のこと
部屋いっぱいのダンボールの意味・・・・・・

そして皆さん、このKさんを語る時に本当に『愛』を持った表現をされているか・・・・

丁寧に関わってこられたからこそ書ける内容ばかりで
私やYYCの直接訪問に行ってないうちのスタッフも
その文章をよむことで心が温まる内容でした。

カツシ先生が主治医でしたので、私自身はKさんとはたった2回お会いさせていただいただけでした。
初診時。『誰や!!!』と鋭い調子で言われましたが
『玉出 夫婦 医師』というキーワードで覚えてくださり『入れ!入れ!!!』と言ってくださいました。
その事を思い出しました。
『写真を撮りましょう』といっても恥ずかしがって頭頂部しか撮してくださりませんでしたが笑顔だった事。
そしてベット上に寝たきりとなってからもう一度お伺いしました。
ダンボールの上にベニヤ板をおいた簡易ベットだったので
『起き上がれるベットに代えませんか?』というと
『それはええなあ。』と言ってくれました。
その2回でしたが。。。。

みなさんのMCSでのやりとりを読むことで
すごくKさんを身近に感じられました。

Kさんらしく最期の最期まで生きる・・
そこにはたしかな一本筋のケアがありました。

 

『呼吸されておりません。・・・・』
訪問看護師さんからお電話があった時
分かっていたことですが・・・
もちろん寂しい思いもありました。
電話を受けた当院のナースは、一度も訪問したことないにもかかわらず涙してくださいました・・・・・
Kさんの訪問に同行してなかったスタッフ達も、みんなちゃんと見守っていました。

こうしてご本人も知らなかったでしょうけど
実に多くの方がKさんの最期を見守ってくださいました。

『お棺には、妻とペットの写真、毎日飽きずに食べていたカップ麺、カレンダー、お気に入りの服
入れていただけるようお願いしました。』

と最後のMCSに訪問看護師Yさんは書いておられました。
こうして亡くなった時に、何をお棺に入れたら良いか分かったくれている方がいること。
私は『Kさん、本当に喜ぶだろうな』と思いました。

 

西成の片隅
雑居ビルの中の
小さなお部屋で
たくさんの愛に囲まれて
最期までじぶんらしさを生き抜いたKさん・・・・・・

かっこよかったです。

そしてKさんを
『大変な人』と評するのではなく
愛情を持った眼差しで見守って
最期まで尊厳を持って接してくださった
この在宅チーム最高だと思いました。

訪問看護師さん、ケアマネさん、ヘルパーさん、そして管理人さんがいたから
Kさんは自分らしく居られたんだと思います。

 

とても感動しました。
YYCをそのメンバーに入れてくださったこと
本当に感謝申し上げます。

大阪での在宅医療の中に光を感じました。

今後とも宜しくお願いいたします。

 

あん奈