よくある症状シリーズ 〜便秘について〜

こんにちは。

さてここ最近の発熱外来では、インフルエンザが大流行している印象です。
受験シーズンで、受験生も親御さんもかなり神経を尖らせてしまうと思います。
あたりまえのことで恐縮ですが、手洗い、うがい、よく食べてよく眠り免疫力を高めて乗り切りましょう。
受験生の皆様が、体調バッチリで、普段の力を出し切れますようにお祈りしております。

 

さて今日は便秘について少しお話したいと思います。

便秘とは?

「慢性便秘症ガイドライン2017」では
慢性便秘の定義を
「本来体外に排泄すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」
と定義してます。

ここでポイントになるのは単なる回数や量で決まるわけではないということです。

食事を摂ってなければ便は少なくなって当然ですし
逆に毎日便があっても「出きってない」「お腹が張る」などの症状があれば便秘症と言えます。

便秘

ブリストル便形状スケールとは?

さて、ご自分の便が硬いのか、ふつうなのかってちょっと言われてもピンとこない方もいるのではないでしょうか?

そこでブリストル便形状スケールというのがあります。

 

ブリストルスケール

【引用】看護roo→こちら

【参考】

  1. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS). 南江堂.(2014)
  2. 慢性便秘症診療ガイドライン2017. 南江堂.(2017)

このスケールがあれば、みなさんで同じような感覚でお話できますね。
治療ゴールはタイプ4をめざしていくといった目標もできます。

どんな便秘症のタイプがあるのか?

ひとくちに便秘といっても原因も起こっていることは様々です。

実際に腸が狭窄しているなどの問題がある
腸の動きが悪いタイプ
食事や食物繊維が少ないなどの摂取不足によるタイプ
気張って出すのに必要な筋肉が弱いタイプ
きばれない
直腸に便が溜まっている感覚が鈍い

 

などが挙げられます。

便秘の原因/要因について

便秘の原因はいろいろ考えられます。

加齢
もともとの病気のため(例:うつ病 パーキンソン病など)
おくすりの影響→多くの薬がお薬の影響で便秘を引き起こしてしまいます。
生活習慣の影響(洋式トイレは実は力が入りにくいそうです→後述)

まずは、便秘がなぜ起きているのか
またそれは改善できそうかというところが
ポイントです。

診断や検査はどうしているか?

国際的には、「RomeⅣ」という診断基準があります。

ただ実際の診療ではいちばん大事なのは問診になります。

問診の内容

・硬いかどうか
・大きな病気をしたことがあるか(特にお腹の手術)
・飲んでいるお薬
・生活習慣
・排便のときの姿勢(和式?洋式?)

などお伺いしていきます。

その他に、身体診察直腸診などを組み合わせていきます。

採血が、病気のヒントになったりして参考になることもあります。
また画像検査として、お腹のレントゲンお腹のエコー大腸カメラもとても参考になります。

もっと専門的な検査もあります。

・排便造影検査
肛門から造影剤と疑似便を注入して、専用の便座で排泄してもらうことで腸や筋肉の動きを観察する

・バルーン排出検査
直腸の中に風船を入れて排泄できる量を観察する

などです。ここらへんは当院ではやってないので必要があればご紹介になります。

 

便秘の治療は?

さて、便秘の治療といえば便秘薬!と思う方も多いのではないでしょうか?

お薬に頼る前に生活習慣を見直すことでうまくいくことがあります。
なのでまずは生活習慣の見直しから始めましょう。

食事指導

バランスの良い食事は、やはりあなどれません。
根菜やきのこなどの食物繊維も大事です。これらは便の量を増やしてくれます。
海藻類や葉物野菜は便を柔らかくしてくれます。

 

排便の姿勢について

最近はほとんどのトイレが洋式になってきてます。
実は洋式トイレは、前かがみの姿勢を取りにくく排便には向いていないそうです。

横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 中島淳先生によると
正しい排便姿勢は、ロダンの『考える人』のポーズだそうです。是非試してみてください。

2019年12月4日 朝日新聞デジタル ”「排便は『考える人』の姿勢で」健康医療フォーラム2019”

排便しやすい姿勢

運動療法

スムーズな排便には運動も必要です。

運動すると、気張るための筋肉が強化されたり、腸の動きも良くなるそうです。

歩くだけでもよいですし
お腹をねじったり、ひねったりして腸を動かしたり
腹筋鍛える運動を積極的に取り入れてみたり
ご自分のできる範囲でやってみるとよいでしょう。

 

お腹のマッサージも効果あり!

腸管は長く折れ曲がっているので便が引っかかって出にくいということもあります。

ご自分でマッサージを取り入れることで出やすくなります。

いわゆる『の』の字を書くようにお腹をさすってみてくださいね。

 

生活習慣の見直しをしても便秘が改善しない場合はいよいよ便秘治療薬を検討します。

お薬による調整

まずは、現在飲んでらっしゃるお薬の中で
便秘を引き起こしているものがないかもう一度見直します。
もし便秘を引き起こすものが含まれているならまずは、そちらを中止できないか一度検討してみます。

その上で、便秘治療薬の開始を検討します。
大きく分けて、便を柔らかくするもの、腸を刺激するものの2種類があります。

●浸透圧性下剤・・・酸化マグネシウム製剤

浸透圧を利用して腸のなかに水分を取り込み便を柔らかくします

●刺激性下剤・・・センノシド ダイオウ ピコスルファート

腸を直接刺激して出します。

●上皮機能変容薬・・・ルビプロストン(アミティーザ®) リナクロチド(リンゼス®)

腸管上皮というところに作用し腸管内にむけて水分を分泌させ便を柔らかくします。

●胆汁酸トランスポッター製剤・・・エロキシバット水和物(グーフィス®)

大腸の中へ水分を分泌される作用の他に消化管運動も促進させる作用があります。

●漢方薬(大黄甘草湯 潤腸湯 麻子仁丸 など)

漢方薬にも便秘に効果があるものがたくさんあります。
最近、ダイエットで流行っている『防風通聖散』を希望して来られる若い女性が多い印象です。
たしかによい漢方ですが、すべての人に合うわけでなく、体力があり、抵抗力の強い「実証(ジッショウ)」
の方向けのお薬ですので診察してもっと合いそうなものがあればそちらをおすすめしますね。

 

 

このように、単純に便秘薬といっても幅広いので
おひとりおひとりにとってどの処方がいいのか相談しながら処方していきます。
基本的には、まずは便を柔らかくしないと、直接腸を刺激して出すのは痛いです。

まずはブリストルスケール4(上記)を目指して柔らかくして、数日に一度刺激性の下剤で出すという方法が一般的かもしれません。

おわりに

さて、便秘。
慢性的なことで諦めておられる方も多くおられると思います。
便秘について相談するのはなんとなく恥ずかしいと思っておられる方もいると思います。

でも便秘もほっておくと腹痛などのツラい症状の原因になったりします。
腹痛で救急受診される患者さんの中には便秘も意外に多いです。

たかが便秘、されど便秘!!

是非、便秘でお悩みの方がおられましたらお気軽にご相談いただけたらと思います。

 

あん奈