人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。⑩時期別の状態とケア(亡くなる数日前)

このシリーズは、人が最期の時を迎えるときのケア、ターミナルケアについて順番にお話してます。
是非、シリーズ通してお読みください。

 

① 導入編→こちら

人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。① 導入編

②   最期のときの3つのパターン→こちら

人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。②最期のときの3つのパターン

③ 全人的苦痛という考え方とは→こちら

人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。③全人的苦痛という考え方とは

④ そもそも緩和医療とは?→こちら⑤ 死を受け入れるということ→こちら

人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。④そもそも緩和医療とは?

⑤ 死を受け入れるということ→こちら

人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。⑤死を受け入れるということ

 

⑥ スピリチュアルな苦痛?→こちら

人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。⑥スピリチュアルな苦痛?

 

⑦ 予後予測について→こちら

人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。⑦予後予測について

⑧時期別の状態とケア(亡くなる数ヶ月前)→こちら

 

人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。⑧時期別の状態とケア(亡くなる数ヶ月前)

 

⑨時期別の状態とケア(亡くなる数週間前) →こちら

人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。⑨時期別の状態とケア(亡くなる数週間前)

 

 

引き続き、こちらのパンフレットもご参照ください。

緩和ケア普及のための地域プロジェクト(厚生労働科学研究 がん対策のための戦略研究)より
これからの過ごし方について』というパンフレットがあります。
このパンフレットもとても参考になるので是非御覧ください。→こちら

これからの過ごし方について

これからの過ごし方について』

 緩和ケア普及のための地域プロジェクト

 (厚生労働科学研究 がん対策のための戦略研究)

 

 

 

今日は、残された時間が数日前の段階の話をします。

 

●このときのお体の様子は

この時期は、意識が落ちて眠った様子になる方が多いです。
そのため少し寝ぼけていていつもと違うように見えるかもしれません。
トイレにたつことができなくなったり、食事を摂ることはムズカシイかもしれません。

寝言を言ったり、現実にはないものが見えたり。
この状態を医学用語で『せん妄』という言い方をします。
ご家族様はびっくりされるかもしれませんね。

でもこれはよくあることで自然なことです。

あまりに本人もつらそうならお薬で鎮める事もできますが
あまり辛くないようなら
否定せず温かい声かけで様子を見てもらえば大丈夫です。

『虫が見える!』というようなことをとおっしゃられても
『どこに??いないでしょ!』なんて頭ごなしに否定せず
『じゃあ私が外に行ってもらいますね〜』みたいに流してもらえたらと思います。

周りが穏やかに優しく接していると
不思議と本人さんも落ち着かれます。

 

 

●この段階で医療者が気にしておくこと、患者さんがクリアしておくべきこと

この段階では
今まで行ってきたケアや医療を今一度見直し不必要なものをなるべく止めていきます。

点滴をされている方も
お体がかえって浮腫んだり、胸に水が貯まるようなら
点滴中止を検討していきます。
その方がお体への負担は軽いと言われています。

お薬がお口から摂れなくなってきたら
座薬にしたり、貼り薬にしたり、時には血管ではなく皮膚の下への注射(皮下点滴)を検討していきます。

 

●家族は何したらいい??

よくご家族様から『なにか私達にできることはありますか?』
と聞かれます。

私はその時は
『聴覚と触覚は最期まで残るそうですよ。優しい声かけと体やお顔や手をさすってあげてください』
とお返事してます。

体をさする

今までの感謝や言いたかったことを
耳元で優しく声掛けしながら
手やお体を撫でることは
残された家族にとってもかなり意味のあることです。

これはこの後述するグリーフケアの一貫とも言えます。

 

グリーフ(悲嘆)・ケアとは?

抱きしめる

患者さんが亡くなられると家族は悲嘆反応という悲しみを乗り越えるプロセスが待っています。
これは誰しも多かれ少なかれありますが
そのプロセスが正常に経過して、癒えていくためのケアをグリーフ・ケアといいます。

亡くなられた方との関係性の深さ
亡くなった時の状況
などによって、その反応の程度はかなり個人差があります。

残された方は
死別の事実を認め、乗り越え、故人がいなくなった後の環境に適応し、新しい生活を始める
必要があります。

私達医療者にできるケアはそれほど多くないのかもしれません。
でも一緒にターミナルケアを頑張ってきた者同士
分かりあえるものもあると思っております。

 

日本では、葬儀のあとも
いろいろな伝統的な儀式があります。
そのこともグリーフケアの一貫になりますね。

また故人を偲んで
みんなで色々思い出して話すことで
自分の知らなかった故人の事が見えてきたりするので
これもグルーフケアの一貫になります。

医療者も、『あのとき〇〇さん奥さんのこと、こう言ってたよ!』と家族と話すことで
医療者自身のグリーフケアにもなり癒やされるものです。

もし一連の介護のことで
万が一後悔していること、懺悔したい気持ちがある時は
是非それも吐露してください。
その時はそうしないといけなかった事情があるでしょうし
そこまで悩んでくださるのもやはり家族だからとも言えます。
心にためずに吐き出すことですこしづつ癒えていくように思います。

おわりに。。。

さて、いよいよ次回は看取りの段階です。

思ったより多くの方がブログを読んでくださって『読んだよ〜!』っておっしゃってくれます。
ありがとうございます。
また折に触れて読み返し、加筆修正を加えていこうと思います。

ここに書いていることが全てではないし
現時点での私の経験の中でのものなので
そぐわない部分や納得できない部分があればご容赦くださいね。

ご自分の心と体が安定するように
必要な部分だけお読みくださればと思います。

どなたかの心に
いつしかお役に少しでもたてれば
これ以上に嬉しいことはございません。

ひきつづきよろしくお願い致します。

 

あん奈